北朝鮮は占いを「迷信」として取り締まっている。刑法第291条(迷信行為罪)では迷信行為を労働鍛錬刑や労働教化刑の対象とし、青年教養保障法第41条も青年の禁止行為として迷信行為を明記している。占い師は公開処刑されることもあり、摘発者には公開批判会という吊し上げが行われる。
それでも若者の間では占いへの依存が強まっている。経済政策の失敗で生活苦が続く中、未来への不安を占いに託し、心理的な慰めを求める傾向があるためだ。
(参考記事:「金正恩は終わる」と予言…北朝鮮の人々がハマる占い師たち)
平安南道の情報筋によると、20〜30代の若者が占い師を訪ねるケースが増えている。四柱八字や金運を見てもらい、職業や結婚、商売の方針まで占いで決める者も多いという。平城市の占い師A氏は「よく当たる」と評判になり客が急増しているが、取り締まりを避けるため1日4〜5人しか受け付けないという。
A氏のもとを訪れた若者の一人は「今年は運が悪い、来年から商売を始めろ」、「家族に重病人が出て近く亡くなる」と告げられた。すると、本当に家族が病死したことで評判が広まり、さらに客が増えたという。
(参考記事:「公開処刑でも止められない」平壌市民の“禁断のお楽しみ”)情報筋は「摘発の恐怖があっても占いを求める若者は減らない。特に身分が低く、自力で未来を切り開かねばならない人ほど占いに頼る」と指摘する。国営工場などでの出世が望めない中、商売で成功しようとするが、商材によってはそれすら取り締まりの対象となる。こうした理不尽な状況が、占い人気を後押ししているのだ。
平城市在住の30代の若者は「悩みや不安があるとき、占いで慰められ気持ちが落ち着く」と語る。友人同士で占い師を紹介し合い、一緒に訪ねることもあるという。「占いですべてが解決するわけではないが、少しでも良い道を見つけたい、慰めでも得たい」と若者は話した。
