北朝鮮の金正恩総書記は先月24日、巨大リゾート「元山葛麻海岸観光地区」の竣工式に家族と共に出席した。その様子は国営メディアで大きく報じられたが、現地住民の間では、開業に対する期待よりも負担感の方が強いと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
平安北道の住民情報筋(匿名希望)は、「夢の祝祭ではなく苦痛かもしれない」「人民は大きな期待を抱いていない」と述べた。
負担感の背景にあるのは、深刻な電力不足だ。情報筋によれば、「観光地活性化のために電力をすべて観光地区に回すと言われており、住民の生活は今より厳しくなるだろう」、「電気もまともに来ない状況で、元山葛麻海岸観光地区の事業が我々にどんな利益をもたらすのかと冷笑している」という。
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また「主にロシア人観光客が訪れるだろうが、北朝鮮の劣悪な実情を知れば、やがて足が遠のくはずだ」として、観光振興への期待も低いという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面別の情報筋も、「人民の暮らしと無関係な外貨稼ぎ事業だ」という地元住民の評価を伝えた。
実際の建設は党ではなく、軍傘下の外貨稼ぎ機関と住民が担った。軍人や各地から集められた労働者が大量に投入されたとされる。資金は外貨稼ぎ機関が負担し、党や政府からの支援はなかったという。
建設費は外貨稼ぎ機関の自前資金で賄われ、今後3年間の観光収益によって回収される仕組みだ。そのため観光地区の運営権も、当面は観光当局ではなく、当該機関が持つことになるという。
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こうした背景を知らない人々の間では、「党が全費用を負担して完成させた」と誤解される可能性があると、情報筋は指摘した。