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タバコの銘柄が、男性の社会的地位を示す国がある。

男性同士が出会ったら、胸元からタバコを取り出し挨拶代わりに一本勧める。これは中国で比較的最近まで見られた光景だ。どんな銘柄を吸っているかによって、その人物が「値踏み」されることもあり、背伸びして高級タバコの中華や熊猫、或いは米国産のマルボロを吸う人もいた。「お偉方なのに庶民のタバコを吸っている」などと噂でも立つようものなら、沽券に関わる。

これらタバコの空き箱に安物のタバコを詰めて吸って、他人に勧めるものに限って本物にするという猛者すらいた。北朝鮮では、今でもそんなことをやっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北朝鮮では未だにタバコの銘柄が男性の権力と財力の象徴となっている。特に幹部はフィルター付きのタバコを吸って、これ見よがしに見せつけるものだ。ところが、昨今の経済難でそれも難しくなっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、幹部たちは最近、フィルター付きのタバコは外でだけ吸い、自宅ではタバコ葉を切り刻んで紙に巻いて吸っている。

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昨今の経済難に加え、タバコ葉の中国からの輸入が減ったことで、工場は、輸出用のタバコしか生産しなくなった。それに伴い価格も上がったことから、タバコは以前のように気軽に吸えるものではなくなった。ハイエンドクラスで金正恩総書記も愛用する「7.27」や「黎明」は、1箱2万北朝鮮ウォン(約120円)もする。

(参考記事:金正恩氏「火気厳禁」「学校教室」でもタバコ吸い放題の非常識

生産が行えている工場の幹部の月給が5万北朝鮮ウォン(約300円)なので、飲まず食わずでも2箱半しか買えない計算となる。安いフィルタータバコは、高級品の半額程度だ。

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両切りタバコの「百勝」ならば、高級タバコの4分の1で購入できるが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の下戦士(二等兵)に支給されるもので、幹部とあろうものがこんなものを吸っていたらメンツが丸つぶれだ。

(参考記事:ヤニにまみれた北朝鮮医療「助かりたければタバコ2カートン」

別の情報筋は語った。

「ここ(北朝鮮)では、男性がどのタバコを吸うのかで、生活水準が評価される。いいタバコを吸っていれば財力があると評価され、威信が高まるが、安物を吸っていれば、生活が苦しいとみなされ、くだらない人間扱いされてしまう」

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そのため幹部は、タバコ一つとっても気を使わなければならないのだ。

北朝鮮では、手軽なワイロとして高級タバコが使われるが、必ずしも転売目的ではなく、このような体面維持費としての用途も存在するのだ。

(参考記事:飢えても最新ファッションに身を包む北朝鮮の若者たち

無理をしてでも体面を保とうとするのは幹部だけではない。若者たちはファッションやスマホで評価されてしまうので、できるだけいいものを使おうとする。

逆に闇両替商などの「本当の金持ち」は、貧しいふりをする。資産があるのがバレてしまえば、安全局(警察署)や保衛局(秘密警察)のタカリにあってしまい、最悪の場合、全財産を骨の髄までしゃぶり尽くされてしまう。