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北朝鮮には複数の銀行が存在するが、利用する人はあまり多くない。2009年の貨幣改革(デノミネーション)のときに銀行に現金を預けさせられ、新紙幣の引き出しに上限が儲けられたことで、財産の多くを奪われたことが人々のトラウマになっているからだ。

また、国営の銀行に預金することで、資産額が当局にバレてしまい、ゆすりたかりのネタに利用されかねないという理由もある。さらには普段でも自由に引き出しできないこともあるなど、メリットがまったくないのだ。

(参考記事:北朝鮮の通貨暴落…責任者「反逆罪で処刑」の生々しい場面

銀行は、預金者に抽選で賞金を支給するなどのキャンペーンを行っているが、それも通貨安で帳消しになってしまう。結局、資産は米ドルや中国人民元に両替して、タンス預金にしておくのが一番安心できるのだ。

貯蓄額を少しでも増やしたい当局は、強硬策に出た。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋が明かしたその策とは「強制預金」だ。

新浦(シンポ)、金野(クミャ)などの地元当局は、資産があるなら銀行に預けよと宣伝している。だが、それだけにとどまらず、人民班長(町内会長)に貯金を取り立てさせている。

その額は1世帯あたり1カ月2万北朝鮮ウォン(約340円)以上だ。市場で丸一日商売しても、その10分の1も稼げない状況で、この額はかなりの負担となる。

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「人民班長が毎日のように家にやってきて玄関を叩いてカネを持っていく。貯金はいつでも引き出せる、額は後日に通帳で確認できるとの説明付きだ」(情報筋)

情報筋の住む人民班では、全くカネが出せていないのは2世帯だ。概ね1割という計算になる。

「商売上がったりで、その日暮らしをしている人々は本当に経済的余裕がない」(情報筋)

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この強制預金だが、来年行われる朝鮮労働党第9回大会の準備のためだと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が語った。

「この数年間、当局は道、市、郡を競争させて、地方発展に取り組ませている。来年に朝鮮労働党第9回大会を控え、当局は、各地域の機関、工場などに何らかの成果を出すように求めている。全国的に『党大会を成果を持って迎えよう』という運動が繰り広げられている」(情報筋)

工場やレストランの建て替え、環境整備事業などの成果を報告しなければならないため、そのための資金を補おうと強制預金キャンペーンを繰り広げているのだ。しかし、内情はお粗末なものだ。

「資金が絶対的に必要だが、銀行に現金がないため、事業は遅々として進まず、労働者や事務員の月給も欠配になっている」(情報筋)

収入の有無を問わず、貯金は無条件で取り立てられるものだが、強制的に預金させようとしても応じる人はさほど多くない。トンジュ(金主、ニューリッチ)など金持ちほど銀行を避ける傾向にあるという。理由は上述の通り、銀行を全く信用していないからだ。

強制預金は今までも何度も行われてきたが、うまくいった試しがない。

(参考記事:「給料は20倍になったけれど…」急激な通貨安に動揺する北朝鮮

こうやってかき集めた資金もきちんと使われる保証はない。

「こんなふうにしてでも地方が発展できるのならいいが、その可能性はほとんどなさそうだ」(情報筋)