韓国デイリーNKは最近、北朝鮮の教育新聞社が2022年に発行した、幼稚園児向けの教育資料を入手した。「つぼみ」というタイトルのこの資料から、北朝鮮が子どもたちをどのように教育しているかが読み取れる。
内容は、金正恩総書記の祖父・金日成主席や父・金正日総書記、そしてその一族の神格化だ。こうした洗脳教育は、幼児期から生涯にわたって続く。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)
一方、資本主義国家への敵愾心を煽ることも忘れてはいない。ここでは資料に掲載されていたコラム「冗談でしょうか?殺人でしょうか?」を紹介する。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ある資本主義の国で、5歳の子どもが自分の弟を拳銃で撃ち殺す恐ろしい事件がありました。
冗談でしたことでしょうか?
その子が住む資本主義の国は、自分のことしか考えない、自分のためなら人をも殺す国です。
資本主義の国の子どもたちの見る映画は、強盗が出る映画、おもちゃも人を傷つけるものが多いです。
見たり聞いたりするのがすべてそのようなものなので、その子は、自分の言うことを聞かないと言って、躊躇なく本当の銃で自分の弟を撃ち殺しました。
これは2018年、米ミズーリ州で、5歳の子どもが偶然に見つけた父親の銃で、7歳の兄を射殺した事件のことを指しているようだ。おもちゃの銃と勘違いしたことから起きた悲劇で、問題の本質は銃社会にあり、資本主義か否かは関係ない。
そんなことはどうでもいいようで、資本主義という言葉すら知らない幼稚園児のころから、資本主義社会に対する否定的な意識を植え付けようとしているのだ。そして、自分が住む社会主義の北朝鮮は、幸せで安全な国と信じさせるということだ。
なお、世界銀行によると、北朝鮮の2015年の人口10万人あたりの殺人発生率は4.40人だ。一方で、時期はズレるが韓国は0.531人(2022年)、日本は0.233人で、北朝鮮よりははるかに低い。世界平均の5.19人よりは若干マシだが、アジア平均の2.04人より高い。ちなみに、アメリカは5.763人(2023年)で北朝鮮より多い。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面プロパガンダは往々にして、歪曲されたことを事実と信じさせるもので、ファクトがどうであろうが関係ないのだ。
(参考記事:金正恩「忠誠のちびっ子計画」に学童父母が猛反発)子どものころからこんな教育を施されることについて、北朝鮮の大人は決して肯定的に見ているわけではない。
「毎日(金氏一家の)肖像画に挨拶をして、歌は元帥様(金正恩総書記)を愛するとかどうとかいうもので、子どもたちは自分たちが一番幸せだと思い込んでいる。人々はそんな子どもたちを見て『子どもに何がわかる』とため息を付く」
「何も知らない子どもたちに元帥様大好きとか諳んじさせる様子を見ると本当に残念に思う」(情報筋)
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嘘を教え込んだところで、それなりの年齢になると、その虚構に気づいてしまう。韓流コンテンツに夢中になり、韓国に憧れを持つようになる。嘘に基づいた思想教育はかくも脆く崩れ去るのだ。