両江道の幹部によると、金亨稷郡の工場の竣工式の様子をTVカメラで撮影するために、今月11日と12日の両日、虚川江(ホチョンガン)水力発電所で生産された電力を、すべて工場に回した。
(参考記事:金正恩ご自慢のタワマン「エレベータ5時間待ち」で悪夢の日々)金亨稷郡の邑(郡の中心地)に住む住民は、今月16日の光明星節(故金正日総書記はの生誕記念日)に、1世帯当たり焼酎1本、石鹸1つ、小麦粉でできた味噌4キロの配給を受けたが、これは撮影時の工場で生産されたものだ。しかし、邑以外の地域に住む人への供給は行われなかった。生産量があまりにも少なかったためだ。
郡の人口は約5万7000人で、邑の人口は4000人程度と言われている。1世帯当たり3〜4人と考えると、焼酎1000本、石鹸1000個ほどしか生産できなかったということになる。
工場が稼働できるのは、川の氷が溶ける4月になるとこの幹部は見ている。つまり、毎年冬季は休業ということになる。
「両江道のみならず、他の地域に建設された地方工業工場も、現在電力問題により稼働ができずにいる。工場は、電力供給が円滑に行われる真夏にだけ稼働することになりそうだ」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ということで、北朝鮮には世にも珍しい「季節営業」の工場が林立することになる。だが、国は各工場の事情を考えず、一方的に生産ノルマを押し付ける。達成できなければ工場のトップのクビが飛ぶので、工場の施設を民間人に貸し出すなど、何らかの形で資金稼ぎをすることになる。
すべての調味料、生活必需品を国営の工場で生産し、市場経済を抑え込み、中央集権的な計画経済に戻そうとした金正恩氏の目論見が、もろく崩れ去ったことになる。
なお、4月になると、各工場は学校の新入生の制服の生産に入らなければならない。そうすると、また民家や他の工場への電力供給が止められることになりかねない。