想定外にも程がある。金正恩総書記が鳴り物入りで立ち上げた「地方発展20×10」政策。首都・平壌とは比べ物にならないほど立ち遅れた、地方の経済に投資し、バランスの取れた発展を目指すというもので、これに基づいた工場が次々に完成している。
国営メディアは盛んに喧伝しているが、現場の幹部から政策の存在意義に疑問を呈す声が上がるほど、うまく行っていない。建設された工場がいずれも正常に稼働できていないと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
国営の朝鮮中央テレビは、両江道(リャンガンド)の金亨稷(キムヒョンジク)郡の地方工業工場の竣工式が11日に行われたと報じた。だが、現地の電力部門の情報筋によると、この工場は現在、稼働できていない。竣工式の当日にテレビ撮影のため、少しだけ稼働しただけだった。
その最大の原因は、電力の供給難にある。
(参考記事:金正恩住宅「テレビカメラの前で壁崩壊」の大惨事)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は昨年2月から3月にかけて、平安南道(ピョンアンナムド)の成川(ソンチョン)を皮切りに、全国の20の市や郡で地方工業工場の建設を始めた。当初の完成目標は、10月10日の朝鮮労働党創建日だった。
ところが、8月末に行われた地方発展事業協議会の場で金正恩氏は、工場と共に先進的な保健施設、科学技術普及拠点、穀物管理施設も建設することを指示。これにより、当初の工期が守れなくなった。12月末が新たな工期となったが、これが問題の発端となった。情報筋は語った。
「建設日程を延長させる際、中央が予想していなかったことがある。12月になれば川が凍り、水力発電所の稼働率が下がり、タービンの回転数が減少する。それにより電圧が
下がり、供給できる電力も減少する」
「電圧が低くなることも工場の稼働にとって大問題だが、電力の周波数が下がり、モーターを動かせなくなったのはさらなる問題。そのせいで上モノは完成したのに、中身が完成できない工場が出た」
冬の電力不足は、北朝鮮を慢性的に悩ませている事象だ。完成当時は東洋最大と言われた水豊(スプン)ダムがあったおかげで、電力には困らなかった北朝鮮だが、時代が変わるにつれ、需要が高まり、電力が不足するようになった。
その解決のため、各地に巨大なダムと発電所がいくつも建設されたが、冬に雪や雨があまり降らない気候であるため、充分な水量が確保できず、冬季に電力が不足するようになった。国際情勢など様々な条件から電力供給の多元化に取り組めず、建設される発電所は水力ばかりで、電力不足は一向に解消しなかった。
(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導)また、せっかく完成させた水力発電所も設計ミス、手抜き工事などの様々な要因で、生産できる電力は予定された容量をはるかに下回った。
(参考記事:深刻すぎる北朝鮮の電力不足で有数の銅鉱山が水没の危機)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
金正恩氏は、そのような状況を想定できずに指示を下したようで、結局工場が稼働できない状況に陥ってしまったのだ。
金亨稷郡の工場は昨年12月12日までに設備が完成したが、電圧が低いため、試験稼働すらできずにいる。また、両江道当局は、道内の他の工場の試験稼働を行うために、あろうことか1月29日の旧正月に、全世帯、工場、企業所への電力供給を完全にストップするはめになった。