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久々の大ヒット映画は、国の根本を揺るがしかねない超問題作だった。

北朝鮮で昨年2月に公開された映画「72時間」。1950年に勃発した朝鮮戦争をテーマにしたこの映画だが、「1950年6月25日未明、米軍が主導する国連軍が北朝鮮に侵攻してきたが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)はそれを跳ね返して南へ進軍。3日後にソウルを解放した」という、北朝鮮の「正史」に基づいた内容だ。

北朝鮮国内で久々の大ヒットとなったこの映画が、新年2日と3日に国営の朝鮮中央テレビで放映された。ところが、これが大きな波紋を呼んでいる。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

この映画は、昨年2月の平壌でのプレミア公開を皮切りに、4月15日の太陽節(故金日成主席の生誕記念日)までに各道庁所在地でも上映が始まった。しかし大人気を博していた最中の昨年5月末、当局はこの映画の上映を突如として禁止した。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、上映禁止令に伴い、国家保衛省(秘密警察)が各道の映画普及所に立入検査を行い、映画のデータがUSBやDVDなどにコピーされて流出していないかを調べた。そして、違反者を摘発、処罰した。

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北朝鮮の人びとは、もはやこの人気映画が見られないものと考えていた。それが突如として急に正月2日、3日の20時半というゴールデンタイムにテレビで放映されたのである。

「中央の指示で(上映が)全面禁止されていたこの映画が、新年を迎えて急にテレビで放映され、住民は驚きを禁じ得なかった」

なお、その内容は断片的に伝えられるだけだったこの「72時間」だが、動画投稿サイトなどで国外でも全編が見られるようになった。

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映画を見た北朝鮮の視聴者は、こんな感想を抱いた。

「この映画は『1950年6月25日午前5時に、米帝の不意をついた侵略で朝鮮戦争が始まった』という、今までの国のプロパガンダの内容とは完全に異なる」(情報筋)

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映画では、戦争が6月24日の夜に始まっており、米軍の奇襲で戦端が開かれたのではなかったことが詳細に描かれてしまっている。つまり、「国家的なウソを自ら暴露した形になる」というのが、情報筋の説明だ。

言うまでもなく、朝鮮戦争は北朝鮮による先制攻撃から始まったものだ。北朝鮮当局はその事実をひた隠しにし、海外情報に触れて真実を語ろうとする者がいれば、政治犯収容所に送るなど厳しく抑えつけてきた。

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そんな実態について、薄々気づいていた人もかなりいたとのことだが、今まで教えられてきた「帝国主義勢力の侵略をはねのけ、国を守り抜いた」という国の根幹に関わる歴史が完全な虚構だったと知った人びとは、怒りをあらわにしているとのことだ。

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金日成氏や故金正日総書記の業績の扱いを小さくし、金正恩総書記の神格化を進めるプロジェクトが行われており、「72時間」のテレビ放映はその一環かもしれないが、そうだとしても、あまりにも無謀な手法だろう。映画製作の当初の目的は、「米国や韓国への敵愾心を煽る」もののはずだったのだが……。