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北朝鮮では今月、「大学入学のための予備試験」、通称予備試験が行われた。これは日本の共通テスト(旧称センター試験)に相当するものだ。

内閣教育省はその日程を15日前倒しにしたことで、受験生や親の間で少なからぬ波紋が広がった。そしてその成績が発表されたのだが、それを巡って再び一悶着起きている。咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

咸興(ハムン)市内のある高級中学校(高校)では、今月8日午前10時に予備試験の結果が校舎の中央玄関に貼り出された。大きな紙に市内の高級中学校の受験生全員の科目ごとの点数、合計点、等級が書かれたものだった。成績を貼り出すことは、学校側が試験の際に受験生に通達していたものだ。

ところが、どういうわけかわずか1時間で取り外されてしまったのだ。

自分の成績を見られなかった受験生や親からは抗議が相次いだ。

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「予備試験の成績だけで大学に行ける訳ではないが、成績が良ければ大学に行ける可能性が高まる。受験生も親も藁をも掴む心境だ。等級がよければ様々な可能性が考えられるのだが、たった1時間で成績を貼り出した紙が取り外されたので、抗議が相次いだ」(情報筋)

北朝鮮で大学に進学しようとするならば、成績と共に成分(身分)の良さは必須要件だ。学校や勤め先からの推薦があってこそ受験できるが、成分が悪ければそれすら出してもらえない。

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

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また、地域別に大学の入学定員の割当が決まっている。人口80万弱で北朝鮮第2の都市である咸興市の場合、2025年度の大学入学枠はわずか50人だ。その狭い枠を巡り、入試競争は別の意味で熾烈にならざるを得ない。

親の地位と財力を総動員すれば、多少成績が悪くとも枠に滑り込むことができる。それで、入試の前後には、「黒いカネ」が飛び交うのだ。入試問題もカネさえあれば事前入手が可能だ。かくして、本当に優秀な若者が大学進学を諦めざるを得なくなる。

(参考記事:「カネとコネ、階級」で合否が決まる北朝鮮の大学入試

受験生本人も親もそんな事情はよく知っているが、カネもコネもない受験生でも大学入学の可能性がまったくないわけではない。自分と他人の成績を見比べて、自分は相対的にどの位置にいるのかを見極めようと必死になる。

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成績がよければ、学校や咸興市人民委員会(市役所)の教育部に行って、「うちの子どもは成績がよかったのに、なぜ大学に入れないのか」、「子どもを入学枠に入れてくれ」と抗議、要求することができる。

そんな中で起きた疑惑の成績発表とわずか1時間での撤去。受験生や親から怨嗟の声が上がらないわけがない。

学校側は「全員の成績を公表すれば、様々な問題が起きるので、それを最小化するために成績を取り外した」と説明したが、個別に成績を問い合わせても「答えられない」との返事を返すばかりだ。

親たちの間ではこんな憶測や嘆きの声が飛び交っている。

「今年分の枠はすでに決められているので、成績を見せつけて抗議できないように、取り外したのではないか」
「子供の成績がいくらよくても、親に権力や財力がなければ大学に入れない。こんなことがいつまで続くのか」