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髪型は時に、政治的な意味を帯びる。「人間の顔をした社会主義」を謳い、抑圧体制からの脱却を図った1968年のプラハの春を前後して、チェコスロバキアの若者たちは、ヒッピーのライフスタイルを真似て髪を肩まで伸ばした。これを「マニチュカ」と言う。ヘアスタイルが抵抗のしるしだったのだ。

当局は、「帝国主義者の堕落した文化」としてこれらを禁止し、摘発者から仕事を取り上げるなどの処罰を行った。1989年に共産主義政権が崩壊するまで、このような風潮は続いた。

文化が体制を脅かすことは北朝鮮もよくわかっており、「反韓流三法」と呼ばれる反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法で、若者の間で広がる韓国文化を押さえつけにかかっている。また、未成年犯罪防止法も、「風変わりな服装、ヘアスタイル、ファッション」を違法としている。

(参考記事:子どもの思想を取り締まる北朝鮮の「未成年者犯罪防止法」

当局が、最近躍起になって取り締まっているのがヘアスタイルだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、清津(チョンジン)市の社会主義愛国青年同盟(青年同盟)は先月、ヘアスタイルに問題のある若者に対する思想闘争会議(吊し上げ、人民裁判)を開いた。

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これは、中央の青年同盟から下された「国が定めたものではない、おかしな髪型をしている若者を厳しく取り締まれ」という指示によるものだ。

北朝鮮は、男性に10種類、女性に18種類の推奨ヘアスタイルを決めている。国営の理髪店、美容院ではこのヘアスタイル以外の注文は受け付けないが、民間人の営む店では客の望むヘアスタイルにしてくれる。

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「これはけしからん」ということで、青年同盟は目抜き通りや大学周辺に糾察隊(取り締まり班)を派遣して、取り締まりを行わせている。彼らがとりわけ問題視したのは長髪、ド短髪、男性のパーマだ。

摘発された人々は、各大学や企業所での思想闘争会議にかけられた。その場では規律遵守、思想の指導などが強調され、若者の「個人主義」的要素に対する批判が相次いだ。集団行動が美徳とされる北朝鮮で、「個人主義」は「自分勝手」を意味するネガティブな言葉だ。

摘発された若者は公開の場で、「道徳観念が遅れている」などと手厳しい批判を受け、取り締まりに対して反省の意思を示さなかったり、反抗したりした大学生2人に対しては、退学措置が下された。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

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清津の若者たちは一斉に反発した。

「政治的に間違った発言をしたわけでもないのに、ヘアスタイルにここまで口出しするか」
「くだらないことまで国が口を出してくるから、息が詰まる」

髪を染めたりするなど、規定から激しく外れたわけではなく、ちょっとした逸脱に対して退学という強硬策を取ったことで、逆に若者の怒りに火を付ける結果を呼んでしまったのだ。