北朝鮮は2020年9月25日、最高人民会議の常任委員会政令で「未成年犯罪防止法」を採択した。しかし、この会議の開催や法律については、公式な発表はいっさいなかった。
韓国デイリーNK編集部はこの度、その全文の入手に成功した。
(参考記事:【全文】北朝鮮未成年者犯罪防止法)この法律は、韓国など外部の文化に晒され続ける北朝鮮の未成年を「守る」という目的で制定されたが、北朝鮮の代表的な思想統制法である「反動思想文化排撃法」より3カ月前に制定された点で注目される。
デイリーNK ANDセンターのファン・ヒョヌク主任研究員は、「通常、全国民を対象とした法律が先に制定され、その後段階的に下位法に拡大されるが、未成年者を対象とした法律が反動思想文化排撃法より先に制定されたのは異例だ」と述べた。
また、「同法は他の法律に比べて詳細な規定が不足していることから、技術的に優先的に制定された可能性がある」「未成年者が比較的衝動的な犯罪に弱いという点と、外部情報流入の可能性が高いという点も考慮された可能性がある」と説明した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面デイリーNKが入手した全文によると、未成年犯罪防止法は18条からなり、未成年者の犯罪を予防し、彼らを「国の頼もしい力軍」に育成することを名目にしている。
同法第9条は、未成年者がしてはならない行為として、▲不純出版物・宣伝物の製作、保管、視聴、流布▲南朝鮮(韓国)の言葉遣いを真似る行為▲風変わりな服装と身だしなみ▲賭博▲不良行動▲迷信行為▲タバコ及び酒、ビール摂取▲凶器所持などを挙げている。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面不純出版物、韓国の言葉遣い、風変わりな服装に関する内容を前面に置いた点で、未成年者の間で発生する当該問題を北朝鮮当局が深刻に認識していることを示している。
北朝鮮の民法は14歳未満を未成年と規定しており、刑法は彼らに刑事責任を問わないように規定している。したがって、この法律で定義した「未成年者」は14歳以下の者を対象にしていると思われる。
そのため、法律は未成年者に対する処罰よりも、遵法教育を強化し、彼らが犯罪や違法行為に巻き込まれないように予防することに焦点を当てている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また第5条は「学校は、未成年の心理的特性と準備の程度に合わせて法教育を政治思想及び道徳教育と密接に結びつけて行わなければならない」と明記し、第7条は親と後見人が子ども、被後見人に対する教養と統制を強化することを義務付けている。
そのうえで、法律は未成年者の犯罪と違法行為を防止するための通報義務を定めた。
第10条と第12条には通報義務、第11条には自首すれば「法に基づいて寛大に許す」という条文があり、自首を促している。
さらに第14条は、未成年者に負の影響を与える可能性のある様々な行為を具体的に明示している。
北朝鮮式ではない衣類の製作及び販売 ▲不純録画編集物製作及び印刷 ▲酒・たばこ販売 ▲不登校の幇助 ▲不法労働などを禁じ、未成年者保護の名目で社会全般の有害要素を排除しようとする意志が込められている。
同法第18条には、民事・刑事上の処罰が不可能な14歳未満の未成年者に代わって、「未成年の教育に責任がある者に、情状に応じて行政的又は刑事的な責任を負わせる」と明記されている。教師や親に未成年者をコントロールさせ、外部の思想や文化の影響を遮断するという意図がうかがえる。
ファン責任研究員は「この法律は成人だけでなく、未成年者まで含めた全国民を統制しようとする意図が込められている」「民事・刑事上の責任を問うことができない未成年者まで法的管理体系に含める試みと思われる」と述べた。