北朝鮮北部を大水害が襲ってから2カ月が経った。国営の朝鮮中央通信は先月30日、金正恩総書記が被災地である平安北道(ピョンアンブクト)を訪れ現地指導を行ったと報じた。
また、同月9日の共和国創建節(建国記念日)の演説で、金正恩氏は次のように述べている。以下、一部抜粋する。
「われわれは、被害復旧を所定の期限内に質的に終えて水害地域人民の正常的かつ安定的な生活を保障し、被害を受けた人民経済部門もその軌道に乗せて自然との闘争も勝利のうちに終えなければならない」
金正恩氏は具体的な期日を示さなかったが、当初は今月10日の朝鮮労働党創建日を目標にしていたことは想像に難くない。「手抜き」と「崩壊事故」を誘う「速度戦」である。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、最高指導者の号令にもかかわらず、復旧工事は遅々として進んでいないようだ。
(参考記事:「最短期間で完工を」金正恩氏、水害復旧現場を視察)デイリーNK取材班は、先月初旬に撮影された新義州(シニジュ)市の水害復旧作業の現場の画像を複数枚入手した。
1枚目は、10数人の男女が作業に当たる様子を収めたものだが、シャベル、バケツ、しょいこ以外の道具は見えず、ほとんどの人が裸足で作業に取り組んでいる。また、作業服も支給されていないようで、男性はTシャツやランニングにショートパンツ姿だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面情報筋によると、これは建物を建てるための基礎工事で、彼らは石を取り除いたり、地面を平らにしたりする作業を行っている。背景に中高層ビルが写っていることから、市内中心部から比較的近いところであると推定される。
2枚目は若干ブレているが、ロードローラーと思しき重機、ダンプトラック、そして周囲には多数の人々が群がっている。ヘルメットらしきものをかぶっている人もいることから、動員された一般市民ではなく、突撃隊(半強制の建設ボランティア)の隊員であるものと思われる。熱心に動いているのかどうかは、画像から窺えないが、作業環境が劣悪であることは見て取れる。
「水害復旧の作業現場は人はもちろん、装備や資材が圧倒的に不足している。水さえも不足しており、働く人々は非常につらい思いをしている」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、現場には悪臭が立ち込めている。トイレが不足しているため、働く人々がのべつ幕なしに用を足し、汗まみれになった服を洗う余裕がないためだ。
(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出)3枚目は、女性突撃隊員の寝泊まりする宿舎と思しき場所を収めたものだ。
情報筋の説明では、角材の柱に透明のビニールシートで覆っただけの小屋ともテントとも言えないもので、天井は1.5メートルに満たないほど低く、日光が降り注ぐ。
寝床は地面の上に敷かれた薄いビニールシートとウレタンマットだ。毛布、カバンなどが乱雑に積まれ、作業を終えても満足に休む場所すら確保できないことが窺える。
情報筋は、撮影を行ったのは秋夕(チュソク、今年は9月17日)前でまだ非常に暑く、働いている人たちは、泥と汗にまみれた体を洗うことすらできず、そのまま寝るしかなかったと証言した。彼らを苦しめるのはそれだけではない。
「暑いし空腹でつらく耐え難かったが、蚊の大群まで押し寄せてきて本当に地獄のようだった。いつまでこんな暮らしをしなければならないのか。本当に苦しい」(情報筋)