資料はまた、外貨の両替について、国のコントロール下にない闇両替商は使ってはならない、国の定めた「協同貨幣取引所」を使うように、と説いている。ところが、これがさらなる不満を引き起こした。
(参考記事:2週間で北朝鮮ウォンの価値が3分の2に…経済の混乱が加速)「すべての単位と公民は、現金を流通させて国の定めた協同貨幣取引所のレートである1ドル8900ウォンを無条件で徹底して守らなければならない」
「群衆監視、法的統制を強化すると同時に、通報体系を徹底確立し、闇両替商が国の定めた協同貨幣取引所のレートより高く貨幣を交換することを考えすらできないようにしなければならない」(資料)
この政策の立案者は、思想教育と取り締まりを並行し、いつでも同じレートで両替できるようにすることで、レートも物価も安定するという、理解に苦しむ考え方の持ち主のようだ。外国に住むわれわれだけではなく、理解できないのは北朝鮮の国民も同じだ。
「既にマーケットで取り引きされているレートは国が定めたものに2倍に達するのに、今更こんな指針を出して何の意味があるのか」
平壌、新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)のレートはそれぞれ異なるが、概ね1ドル8900ウォンの1.8倍程度だ。損をするだけの協同貨幣取引所の利用者はほぼ皆無で、そればかりか、かなりの人がその存在すら知らずにいるとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面指針は、これ以外にもICカードを使った電子決済を優遇する措置を打ち出しているが、積極的に使おうとする人はあまりいないようだ。
このシステムを使うには、銀行や両替所に外貨を持参してチャージしなければならないが、外貨の所有を当局に知られると、あれこれ理由をつけて、資産が没収されてしまうかもしれないとの不安を多くの人が持っている。それで利用を避けるのだ。
(参考記事:金正恩の「経済失敗」で閑古鳥が鳴く平壌の大型スーパー)指針はさらに、次のような措置も定めた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面◯すべての銀行が機関や企業間の決済は口座間の振込で行うが、必要に応じて現金を引き出しての取り引きも可能
◯奉仕単位(国営商店)で歯ブラシ、歯磨き粉、石鹸など15種類の生活必需品を国定価格で販売
◯機関や企業が個人(商人)と取引する場合には、責任者が署名した領収書を発行
◯軽工業工場が生産した製品を国営商業網で販売
◯企業間、または人民経済(民生)部門における外貨両替は許可
指針に違反した場合には法的制裁をちらつかせていることに対して、市民からは「あらゆる物資と現金を没収できるということではないか、こんな恥知らずなことがあるか」という声が上がっている。
ウォン安が止まらない理由の一つとして、強力な取り締まりが続いていることが考えられるが、政策立案者たちは、市場が自分たちの予想したとおりに動かないことに、首を傾げているのだろうか。あるいは、こうなることを知りつつも、上からの指示でこんな馬鹿げたことをやるしかないのだろうか。