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北朝鮮の首都・平壌にある「光復地区商業中心」は、故金日成主席の指示で1989年に完成した高層マンション団地「光復通り」にある大型スーパーだ。3階建てで売り場面積1万2000平米に達し、食品から電化製品に至るまで様々な商品を、外貨や北朝鮮ウォンで購入できる。

北朝鮮国民が実際に利用する商業施設のうち、外国人観光客が訪問可能な数少ない商業施設だ。

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しかし、最近になって急激に客足が落ちている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平壌の情報筋によると、当局は最近、「北朝鮮ウォンを使用せよ」との指示を下した。つまり、外貨使用禁止令だ。これは平壌第1、第2百貨店、児童百貨店、東平壌百貨店など、内閣商業省傘下の百貨店に適用された。

北朝鮮の公式通貨は北朝鮮ウォンだが、信用が全くなく、高額紙幣がなく使い勝手が悪いことから、米ドルや中国人民元など外貨の使用が当たり前になっていた。当局は、時折「外貨使用禁止令」を出していたが、あまり効果がなく、ウヤムヤになってしまっていた。

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ところが、コロナ禍から状況に変化が生じた。当局が、本格的に市場の押さえ込みに乗り出したのだ。穀物や国営工場製の加工食品、電化製品など売れ筋品目の多くが取り扱い禁止となった。また、闇両替商に対する取り締まりも強化された。

その背景について情報筋は次のように説明した。

「市場などの違法な外貨両替を強く取り締まり、国営の両替所の利用を促し、個人が保有している外貨を国が吸収すると同時に、北朝鮮ウォンの利用を促進することで、朝鮮中央銀行の活性化を図る意図があるのだろう」

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信用のない北朝鮮ウォンはいつ紙くずになるかわからないという懸念があり、最高額紙幣が5000北朝鮮ウォン(約50円)で、保管するには場所を取りすぎる。そこで、資産は外貨に両替して自宅に保管するのが一般的だ。銀行も存在するが、北朝鮮ウォン同様に信用されておらず、強制預金キャンペーンが行われない限り、利用しようとする人はほとんどいない。また、銀行に預けると、当局に資産状況が筒抜けになってしまう。

地元政府や党幹部にたかられる程度ならまだマシで、難癖をつけられ全財産を没収された事例も少なくない。「資産は必ず隠せ」というのが、北朝鮮の常識だ。

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そのような事情もあり、北朝鮮国内でいったどのくらいの外貨が流通しているのかは誰も把握できていないと言われている。当局は各地に外貨を使用する高級百貨店、レストランをオープンさせ、外貨での消費を促すことで、外貨を国庫に吸収しようとした。しかしそれだけでは役不足で、外貨使用禁止令を出して、強制的に両替させることにしたのだ。

当局は、光復地区商業中心に両替所を開設して利用を促しているが、消費者からは完全に黙殺されている。レートがあまりに悪いためだ。

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この両替所で使われるのは「協同レート」というもので、当局は市場の闇レートと変わらないと主張するが、実際は大きな差がある。今月15日の時点で、1ドル(約145円)が9000北朝鮮ウォンだった。一方で、闇レートは1万6000北朝鮮ウォンだった。つまり、80%もの大幅値上げとなった。これでは閑古鳥が鳴くのも致し方ない。

それだけではない。上述の通り、北朝鮮ウォンは使い勝手が悪い。

別の情報筋によると、消費者は食料品など単価の低いものは北朝鮮ウォンで購入し、10万北朝鮮ウォン(約1000円)以上の服や化粧品を購入する場合に米ドルを使う場合が多かった。

例を挙げると、液晶テレビは少なくとも700ドル(約10万2000円)するが、これを北朝鮮ウォンで支払うとなると1120万北朝鮮ウォンになり、5000北朝鮮ウォン紙幣が2240枚も必要になる。

今月からは、スーパー内の両替所で北朝鮮ウォンに両替して、電子決済が可能なデビットカードに入れて決済をすることになった。だが、レートが悪い上に、このやり取りが面倒であるため、客足が大幅に減ってしまったのだ。

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各商業施設には売上のノルマがあるが、このままではクリアできなくなるだろう。そうなってから方針が変更されるのか、あるいはなし崩し的に外貨での決済が認められるようになるのか、今後数カ月で何らかの動きがあるだろう。

なお、金正恩総書記の秘密資金を調達・管理する朝鮮労働党39号室傘下の大聖(テソン)百貨店、楽園(ラグォン)百貨店では、今でも外貨の使用が可能だとのことだ。