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北朝鮮・咸興(ハムン)市内の自宅で、ひとりで留守番をしていた5歳の子どもが死亡する事件が起きた。本来なら託児所にいてもよい年齢だが、なぜ留守番をしていたのか。咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは先月26日のことだ。咸興市内に住むAさん、Bさんの夫婦は、5歳になる子どもCちゃんが自宅で倒れているのを、夜に帰宅して発見した。夫婦はCちゃんを急いで病院に搬送した。

検査の結果、脳膜炎と判明したが、医師は「治療すべきタイミングを逸した」と匙を投げてしまった。そして、残念ながらその2日後に亡くなった。夫婦は大切な子どもを失った悲しみと、ひとりで留守番させた罪の意識に打ちひしがれている。

夫のAさんは市内の職場に勤務している。北朝鮮では今年、大幅な賃上げが行われたが、それだけでは生活できず、妻のBさんは市場で商売をしていた。昨今の市場抑制策を考えると、決して儲けは多くなかっただろう。

(参考記事:「賃上げ20倍でも意味がない」不満の声あげる北朝鮮の労働者たち

多忙なAさん、Bさん夫婦に変わり、Bさんの実母のDさんがCちゃんを自宅で預かって育てていた。ところが、Dさんは今年7月、急病で寝たきりになってしまった。それ以降、Cちゃんは自宅に戻り、昼間はひとりで留守番をしていた。夫婦の仕事は多忙を極め、Cちゃんの健康状態を細かくチェックする時間もなかったと、情報筋は述べた。そんな夫婦は決して少なくないようだ。

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「ここ(北朝鮮)では、仕事で忙しい親が子どもに充分な関心を払ってあげられないケースが多い。今回亡くなった子どもも、親が仕事に忙しく、健康チェックをきちんとしてあげられていなかったようだ」(情報筋)

Cちゃんが亡くなったという訃報に接した近隣住民は、とても悲しみ、残念がっている。

「この貧乏な国で、貧乏な親のもとに生まれた子どもが一番苦労する」(近隣住民)

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万民が平等であるはずの北朝鮮で、「親ガチャ」に外れたということだ。

もし、Cちゃんが、「赤い貴族」と呼ばれる抗日パルチザンの子孫や、高級幹部やトンジュ(金主、ニューリッチ)の家族の家に生まれたならば、すぐに入院して抗生剤の投与を受けるなどして、生きられたかもしれない。

だが、生活に追われる一般庶民の親の下に生まれたせいで、まともに治療も受けられずに短い生涯を終えることになったのだ。いや、病院に連れて行ってもらえただけ、まだマシだったと言えよう。

(参考記事:金正恩「赤い貴族」専用の“高級食品”が腐っていて大問題に

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情報筋も憤りを隠せずにいる。

「今回の事件は単に家庭内の悲劇ではなく、社会的問題と見て国が対策を立てるべきなのに、現実は全く改善しておらず、住民の不満は高まるばかりだ」

本来、面倒を見る人のいない5歳の子どもなら、幼稚園で面倒を見てくれるはずだ。しかし、無料で入れるはずの幼稚園からは、様々な費用負担を求められる。Aさん、Bさん夫婦にはそれだけの経済的余裕がなかった。

また、市場での商売は立派な仕事だが、北朝鮮で商売は職業として認められず、単なる個人が利益を得るためだけの行為としてみなされる。つまり、共働き扱いされないのだ。もし、夫婦ともに、国が認める職場に属しているとすれば、それはそれで問題となる。薄給で食い詰めていたかもしれないからだ。

(参考記事:「商売する時間があれば働け」市場から女性労働力を奪う北朝鮮

情報筋の怒りは収まらない。

「国は子どもを産めよ育てよというが、これだから若者は子どもを産もうとしない。国が育児政策を宣伝すればするほど、現実との乖離を感じて鼻で笑う人が増えるだけだろう」

Cちゃんは、国の間違った政策によって死に追いやられたと言っても過言ではないだろう。