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7月末の大雨と洪水で甚大な被害を受けた北朝鮮北部では、急ピッチで復旧作業が進められている。これを巡り、人民班長(町内会長)とトンジュ(金主、ニューリッチ)の間でトラブルとなっている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

恵山(ヘサン)市人民委員会(市役所)は最近、水害で破損した住宅の復旧に必要な資材を購入するための資金の確保に乗り出した。その一つが「税金外の負担」だ。

人民委員会は市内の機関、企業所、勤労団体、学校、人民班に対して、社会的課題を下した。金銭の供出だ。市民に対して手持ちの食べ物、衣類、食器、布団などを「良心に従って出せ」と指示したのだ。ここでいう「良心」は、表向きは自発的な寄付という形を取りつつも、実際は半強制というものだ。

そして、強制の課題として、1世帯あたり3万北朝鮮ウォン(約300円)の現金を出せと指示した。これは各人民班に割り当てられたセメント300キロ、砂250キロに相当する金額だとのことだ。コロナ禍以降、非常に苦しい生活、それも政府の政策的な要因による生活苦にあえいでいる市民が強い不満を示したのは言うまでもない。

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市内に住むトンジュはさらに多くの額を求められている。少なくとも100万北朝鮮ウォン(約1万円)、多い場合は500万北朝鮮ウォン(約5万円)を差し出すよう命じられたのだ。500万北朝鮮ウォンは、コメが830キロも買える額で、一般労働者の23年分の月収に当たる。

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「1日3食すらまともにありつけない人々にとって、想像を絶する大金」(情報筋)

結局、一般人に要求してもとても出せない額であるため、トンジュに責任を押し付けたのだろう。

人民委員会は、各人民班に割り当てたノルマ未達成の人民班長を会議で無能だと吊し上げにする。それを恐れた人民班長は、町内のトンジュを1日に2〜3回訪ねたり、追いかけ回したりしてなんとか取り立てようとしている。

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人民班長は民間人だとは言え、それなりの権力を持っている。逆らえばどんな仕返しに遭うかわからないし、安全員(警察官)に通報されるかもしれない。

中には泣く泣く要求に応じる者もいるが、その権威は以前ほどではないようで、取り立てに苦労している模様だ。

あるトンジュは、「そんなにしょっちゅう訪ねて来るな。まるで借金取りみたいだ。献納は自発的なもので強要ではないはずだ」「班長、あんたが私の商売を一度でも手助けしてくれたことがあるのかい」と人民班長を門前払いにした。

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情報筋は、「かつては人民班長の恨みを買っても何もいいことはないから仲良くしようと、ワイロを渡したりしていたが、最近では人民班長からのカネの要求があまりにもひどく、トンジュも我慢の限界に達したのだろう」と状況を説明した。

水害の復旧費用は本来なら国が出すべきものだが、それを被災者である市民から取り立てようとするから、市民の間でトラブルになる。

(参考記事:「最悪の状況だ」金正恩の経済失敗に漏れるホンネ

曲がりなりにも配給制度が機能していた時代を知っている上の世代と異なり、40代以下の「チャンマダン(市場)世代」と呼ばれる人々は、国からの恩恵を受けたことがなく、国や党の存在をありがたいものではなく、目の上のタンコブと考えている。

国民を防災から守る防災インフラより、タワマンなど目立つものにばかり資金を注ぎ込み、いざ災害が起こったら、金正恩総書記は被災地を訪れ「人民の父」アピールに余念がないが、それ以外の被災地はほったらかしで、復旧費用は被災者から取り立てる始末だ。タンコブどころではなく、ガンといっても過言ではない。