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「自分はいいけど親は…」

韓国葬儀文化振興院の昨年の調査によると、遺体が火葬された割合は92.5%だった。1993年にはわずか19.1%だったが、30年で4倍以上に増え、もはや土葬は珍しくなった。

朝鮮半島では新羅、百済、高句麗の「三国時代」から1000年以上、仏教の影響により火葬が一般的だった。ところが、儒教を重んじる朝鮮王朝になってからは、「身体髪膚、之を父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり」という考えに基づき、火葬に対する拒否感が生じるようになった。

ソウル一極集中が進み、墓地の問題から火葬が推奨されるようになった1990年代、自分は火葬されても構わないが、親を火葬するのははばかられるという人が多かった。また、若くして事故で亡くなった場合に限って火葬するという考えも強かったが、それが過去30年でみるみるうちに変化していった。

そのような意識の変化を経ていない北朝鮮では、未だに火葬に対する拒否感が強い。首都・平壌周辺の山にある墓に対して当局は、改葬の命令を出したが、遅々として進まない。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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平壌市当局は、かなり前に市内の山林にある墓を取り壊すように指示を出した。これは、金正恩総書記が進める緑化事業に基づくもので、墓地が山林の多くを占めていることに基づくものだ。

(参考記事:「土葬規制」を避けて夜にこっそり埋葬する北朝鮮のお葬式

しかし、これは映画のタイトルにもなった「破墓」と呼ばれる行為だ。先祖の墓を下手にいじってはいけないという考え方が強く、市民は命令に従おうとしない。一種のサボタージュだ。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

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命令が一向に実行されないことに業を煮やしたようで、先月下旬に平壌市林業管理局と法務部のイルクン(幹部)からなる調査団を立ち上げ、市内の山林にある墓地の確認作業を始めた。

墓の所有者を探し出し、墓を掘り返させ遺骨を火葬させた後に、保管所(納骨堂)に納めさせるか、山や海に散骨させるかするというものだ。それでも抵抗する場合には「国が勝手に処理する」と一方的に通告する。その期限は、寒さで地面が凍り掘るのが難しくなる秋夕(旧盆、今年は9月17日)までだ。

それまでに何かする意思を見せなければ、遺骨を燃やして散骨する、墓は平地にして木を植えたり、何らかの敷地として利用したりすると警告した。

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それでも抵抗感が強いようで、郊外の三石(サムソク)区域に住む60代男性は、酒を飲んで露骨に不満を示し、人民班長(町内会長)に抗議した。そのことで先月末に地域担当の安全員(警察官)に連行され、安全部に勾留された。

「改葬への抵抗は迷信」というのが当局の考え方のようだが、思想教育でも取り締まりでも如何ともしがたいのが死生観だ。

(参考記事:「金正恩は終わる」と予言…北朝鮮の人々がハマる占い師たち

強硬策を取り続けると、国民の間に動揺が起こるなど、社会不安が広がりかねない。金正恩氏は、金日成主席、金正日総書記の切り捨てと言っても過言ではない事業を進めているが、それによる混乱も起きていると言う。「破墓」が続くのか、尻すぼみになるのだろうか。