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日本では、新型コロナウイルスに感染した軽症の人の療養、無症状の人や海外から帰国した人の隔離のために、各地のホテルが利用された。それは北朝鮮でも同じだが、そのやり方は日本と全く異なる。

韓国デイリーNKは今月5日、2020年に北朝鮮のあるホテルで起きた悲惨な事件について伝えた。

北朝鮮はコロナ禍に際し、人命軽視の極端な防疫措置を取ったが、その中でもこの事件はとくに悲惨な事例と言えるかもしれない。

中国との国境に面する平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)市にある新義州ホテルは、観光客や出張者の宿泊施設として利用されていたが、2020年からは新型コロナウイルスに感染した人やその疑いのある人の隔離施設として利用されるようになった。

コロナ感染者が発生した当初、このホテルには、全国各地から出張で新義州を訪れていた70人が収容された。当局は、感染を疑う症状を見せた人は、症状の軽い重いを問わず無条件で隔離する対応を取った。ホテルに隔離された人の中には、症状の軽い人もいれば、非常に深刻な状態の人もいた。

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しかし、突然のパンデミックに即応するだけの医療リソースが北朝鮮になかったため、ホテルに隔離された人々の診察、治療はもちろん、基本的な医薬品の供給や食事、飲み水の提供すらまともに行われず、人々はただただ閉じ込められて放置されるだけだった。日本でも一部自治体の隔離施設の対応の悪さが批判されたが、それとは比べ物にならない。

その結果は悲惨なものだった。ある新義州市民は当時の状況をこう語った。

「コロナ禍初期には、微熱でも問答無用で隔離していた。実際にコロナが発生し、ホテルに隔離された他地域から来た70人あまりのうち、10日間で20人が亡くなった」

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このような状況の発生に、平安北道当局はパニックに陥った。大慌てで患者の輸送を始め、亡くなった人は防疫規定に基づき火葬した。

出張で平壌から新義州に向かった夫が隔離されたとの知らせを受けた妻は、無事帰宅することを心待ちにしていたが、遺灰となって帰宅した。彼女は骨壺を抱きしめ、「生きていてほしいと願っていたのに、一握りの粉になって帰ってくるなんて」と号泣したという。

ある新義州市民は、当局のお粗末な対応を批判した。

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「ホテルに隔離された人に水や食糧、薬が充分に供給されていれば、大量死という悲劇的な事態は防げたはずだ」

北朝鮮の劣悪な医療システムに起因する新義州ホテルの隔離者大量死事件は、口コミで市民の間に広がったが、当局は一切語るなと徹底したかん口令を敷いた。

それから4年。新義州市民は、ようやくコロナ禍で見聞きした事件のことについて口を開き始めた。この事件は、社会を強力な統制の下に置いている国家が、危機対応に関しては脆弱であることを示した事例として、市民の記憶に刻まれているという。

(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」北朝鮮、軍人虐殺の生々しい場面

パンデミックに際して充分なリソースを投入し、国民の健康と暮らしを守ること、情報の透明性を確保して、国民の不安を払拭すること、そして理解を求めること。北朝鮮政府は、そのいずれの面においても失敗した。

(参考記事:サッカー「平壌開催中止」理由は金正恩の感染症パラノイア…「海水が怖い」「銭湯に行き処刑」と極端な思考

そもそも隠蔽体質が根深い北朝鮮政府に、透明性を求めることそのものに無理があるだろう。そればかりか、対中依存度が極めて高いという経済の現実を無視した国境封鎖、貿易停止という措置を取り、国民の暮らしを破壊した。感染症から体制を守ることが至上命題とされ、国民の生命、財産、健康などは二の次、三の次、いや、それ以下の扱いを受けているのだ。