北朝鮮国営の高麗航空のウェブサイトによると、今月の下旬時点における定期便はわずか2路線、週4便に過ぎない。平壌・瀋陽線が水曜日に1往復、平壌・ウラジオストク線が月曜日に1往復だ。
デイリーNKジャパン編集部が、飛行中の航空機の位置をリアルタイムで表示するウェブサイト「フライト・アウェア」で検索したところ、JS271便は3月18日の午前9時5分に平壌を飛び立ち、ウラジオストク時間11時10分(日本時間10時10分)に到着している。
(参考記事:北朝鮮国営航空、3年半ぶりに定期運航を再開か)使用されたのは210人乗りのツポレフ204−100B型機だった。なお、米国の北朝鮮ニュース専門サイト「NKニュース」によると、この機体は、2019年にキルギスの小さな航空会社にリースされた後に、高麗航空にリースされた。ICAOの登録情報も一致しているが、なぜかボーイング737で登録されている。旅客機のリースは、国連安全保障委員会の北朝鮮制裁決議に違反する行為であるため、偽装リースされている可能性が考えられる。
さて、北朝鮮とロシアを行き来するこの便の「常連」と言えば、ロシアに派遣されて働く労働者たちだ。だが、この日の便にの乗客は100人に満たなかったという。
自国民を海外に派遣して働かせ、給与を搾取するのは手堅い外貨稼ぎの手段だが、ある情報筋は、「当局は派遣を急ぐ必要はないと見ているようだ」と伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面外貨稼ぎの手段は多様化しつつあり、国連安全保障委員会の北朝鮮制裁決議に違反する海外への労働者派遣を、北朝鮮の対ロシア関係が注目されているこの時期に、敢えて急ぐこともないとの判断と見られる。
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それ以外にはどのような人が乗っていたのか。まず、核やミサイルを研究、開発する国防科学部門の研究者、技術者が複数含まれており、別の情報筋によると、「その一部はミサイル総局傘下の発動機エンジン研究所所属だ」という。ロシアの先進的なミサイルエンジン技術を譲り受けるために、派遣されたとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、軍事教育機関である金正恩国防総合大学の博士課程の学生も短期研修のために同便に搭乗し、その他の大学教授や留学生なども乗っていた。
ロシアから北朝鮮に戻るJS272便だが、現地で働いていたが体調を崩し、もはや働けなくなった労働者が搭乗していた。ただ、人数は50人以下だったという。
貨物室には食糧、電子機器、医療用品などが積まれていたという証言もある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「航空機を飛ばすにはお金がかかるので、人も物もなるべく多く積んで行き来する。小麦粉、お菓子、麺などの食料はもちろん、印刷機、インク、コンピュータなどのなどの物資もかなり多く入ってきた」(情報筋)
なお、この便の運航期間は3月18日から25日までとなっている。つまり、2往復しか運航されないということだが、今後の運航計画について、高麗航空からは何の発表もない。必要のある場合に限ってチャーター便のように定期便を設定し、運航する形を取っているのだろう。ちなみに運賃は片道229ドル(約3万4600円)となっている。