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北朝鮮には2つの党(ダン)があると言われた。一つは朝鮮労働党(チョロンロドンダン)、もう一つはチャンマダン、つまり市場だ。「猫の角以外なら何でもある」と言われ、北朝鮮社会の中心となっていた市場だが、今ではすっかり活気を失っている。

コロナ禍での営業制限に加え、コロナ明けには余剰農産物と家内制手工業の製品以外の販売が禁止されたのだ。国内外の工場で作られた加工食品、家電製品、生活必需品の販売が禁止され、国営商店での購入が誘導された。

中でも最も市場に影響を及ぼしているのは、穀物の販売禁止だ。今までは、国の安い穀物買取価格を嫌った農場が、市場に横流しすることで成り立っていたが、金正恩政権は買取価格を大幅に上げて農場から穀物を買い取り、国営米屋「糧穀販売所」でのみ販売ができるようにした。

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取り締まりの目をかいくぐってコメやトウモロコシを販売しようとする人もいるが、当局は厳しい取り締まりを行っている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

恵山(ヘサン)市内では、市場や路上でのコメとトウモロコシの販売に対する取り締まりが強化されている。主食であるこれらは糧穀販売所でのみ販売が可能で、商人が販売できるのは、大豆、麦、ジャガイモなどの主食以外のものに限られている。

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(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

少し前までは、取締官にタバコを一箱渡せば見逃してくれていたが、今ではそれも通じなくなっている。

先月初旬、安全員(警察官)が市内の人民班(町内会)の会議で、コメやトウモロコシを買うなら糧穀販売所にせよと勧告を行った。そして、個人の商人がコメの密売を行って摘発された場合、品物はすべて没収され、罰金やそれ以上の処罰を受けると警告した。

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しかし、多くの人が依然として商人からコメやトウモロコシを買っている。

「糧穀販売所で買って得するならそちらに自然に流れるだろうが、その日暮らしをしている人々はツケでコメやトウモロコシを買えず、必要な量だけ買うこともできないので、結局は個人の商人のところに流れてしまう」
「糧穀販売所も少量で販売するとは言っているが、数百グラム単位で買おうとすると店員の態度が悪くなる」(情報筋)

また、これは以前から指摘されていたことだが、市場での販売価格と糧穀販売所での販売価格にあまり差がなく、糧穀販売所に行くメリットがあまりないのだ。

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あるコメ商人は「穀物販売所で市場より安い値段で売って普通に回れば、個人の商人を取り締まらずとも、自然と商売が成り立たなくなり、やめるのではないか」と語っている。

ただ、このような状況は長続きしないと取り締まる側ですら見ているようだ。

商人と親しい取締官などは「集中取締期間だけ最大限気をつけろ」との忠告をしている。いつものように、時間が経つに連れ、取り締まりが緩和され、ワイロさえ払えば販売ができるようになると取締官も見ているのだろう。実効性のない命令は、そのようにして末端から崩壊していくのだ。

当局は、国営企業、機関の給料を大幅に上げる措置を取ったが、それでも生活するには充分ではない。結局、人々は市場に行って商売をして現金収入を得るしかないのだ。

地方政府の幹部は、そんな状況に目もくれずに取り締まりばかりに没頭しているのではないか、との話も飛び交うが、市場の機能縮小は地方政府の財政にも大きな影響を及ぼしている。税収の多くを市場の商人のショバ代が占めていたが、それが激減したため、行政サービスにも支障が出ているのだ。

(参考記事:「年金を払うカネがない」金正恩の社会保障が崩壊状態