「将軍様の誕生日」で疲労困憊…北朝鮮の旧正月が台無しに

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朝鮮は1895年、日本の影響下で行われた乙未改革で、暦を太陰暦(旧暦)から太陽暦(新暦)に切り替えた。しかし、伝統的行事は旧暦に則って行われ続けた。朝鮮総督府、韓国独立後の李承晩政権、朴正煕政権も旧暦使用に否定的だったが、1980年代中盤からようやく旧暦使用を受け入れるようになった。

北朝鮮も1953年から1988年まで、旧暦の使用は社会主義生活様式に反するとして否定的だったが、1989年から認めるようになった。100年経っても人々の考え方を変えることはできなかったのだ。

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近年は韓流など「非社会主義」の取り締まりに血道を上げているが、それでも旧暦の使用は止めさせられないでいる。

旧暦が使われる代表的なものとして旧正月がある。今年は2月10日で、例年なら先祖に備えるお供物の買い出しで市場が賑わうものだが、今年は閑散としていたという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、新型コロナウイルス国内流入を防ぐために国境が封鎖されていた昨年の旧正月に比べても、今年は雰囲気が沈んでいると伝えた。国境が開き、貿易が再開されたものの、国が貿易をコントロールする「国家唯一貿易体制」のせいか以前のように商品が入荷せず、物価が下がらないのだ。

また、コメ価格は国が定めた配給価格と、国営米屋「糧穀販売所」での価格とに別れており、前者が1キロ5400北朝鮮ウォン(約92円)、後者が6000北朝鮮ウォン(約102円)から6200北朝鮮ウォン(約105円)となっている。配給価格でコメが入手できるのは安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)に勤めている人など一部に限られる。

糧穀販売所より輸入の増大で物価の安定に期待していた市民は、大いに失望している。また、戦時物資を貯蔵する2号倉庫が空っぽになっているため、輸入された穀物はすべてそこに入れられていると強い不満を示す人もいる。

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両江道(リャンガンド)の情報筋は、旧正月を前にしても雰囲気が盛り上がらない理由として、光明星節と近すぎることを挙げた。2月16日の故金正日総書記の生誕記念日だが、市民はその祝賀行事の準備に駆り出され、くたくたになっているという。2025年の旧正月は1月29日で、光明星節とは2週間以上離れているので、来年に期待するしかないだろう。

一方、物価については、糧穀販売所の売り惜しみを指摘している。

本来、コメ1キロの販売価格は、6000北朝鮮ウォンから6200北朝鮮ウォンだが、糧穀販売所は、朝鮮労働党からの指示で5400北朝鮮ウォンでの販売を強いられている。これでは売れば売るほど損をするため、在庫を放出せず売り惜しみしているという。

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糧穀販売所は料金を払ってトラックを借りて農場に向かい、穀物の買い付けを行っているが、買取価格が5400北朝鮮ウォンと大幅に引き上げられたことから、売値が8000北朝鮮ウォン(約136円)にならなければ儲けが出ない。利益を出すことを求められているため、価格の上昇を待っているが、当局はこれを問題視し、検閲(監査)に乗り出した。

(参考記事:拝金主義で骨抜きにされていく「金正恩の米屋」計画

コメ価格を巡るいざこざが解決しないままで迎える旧正月に、情報筋は「旧正月をきちんと迎えてこそ、1年を無事に過ごせると昔から言われているが、ここ(北朝鮮)の住民はますます苦しくなる生活のせいで、旧正月は無意味なものになる」と懸念を示した。

穀物の流通主導権を国の手に取り戻す目的で始めた糧穀販売所だが、様々な問題が噴出しており、その先行きは暗い。

(参考記事:金正恩氏が父の大失政「貨幣改革」のマネごとをする謎