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北朝鮮は昨年7月、教化所(刑務所)の受刑者の刑期短縮規定を施行した。金正恩総書記の方針に基づくものだが、それにはそれなりの理由があった。

北朝鮮の拘禁施設に詳しいデイリーNK内部情報筋によると、昨年3月に全国の教化所に対する3年異常続いたコロナ禍での運営実態について総合総和(総括)が行われた。その後の6月に金正恩氏の批准を受け、翌月に刑期短縮が行われた。

その理由について情報筋は、「教化所内の死亡者を徹底的に減らそうというのが核心」だと説明した。

「コロナ期間に、教化所で死亡者数が急増したことに対する対策として、恩赦を与え、(受刑者を)早く社会に送り返し、刑務所内で死なせないようにするのが目的」

北朝鮮では、受刑者が教化所内で死亡すると、その家族はもちろん、5親等までに所謂「赤いレッテル」が貼られる。問題のある人物、家族という意味だ。それにより、人事などで不利益を受けることとなる。

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何の罪もないのに巻き込まれ、不利益を受けることとなった家族や親戚は、国に対して激しい不満を抱く。食糧難が解決されない中、人々が現金収入を得るほぼ唯一の場所である市場に対する統制が強められていることで、金正恩政権に対する世論は悪化している。そんな中、さらに不満分子を増やすことはリスキーだと考えたようだ。

「遺された家族、親戚らが党や国家に背を向けるよう追い込んだり、離脱させたりする必要はないとの判断で規定変更が行われた」(情報筋)

北朝鮮の教化所は、過酷な労働と集団生活を通じて罪と向き合わせ、改悛させることに目的があり、「全員を死なせようとしているわけではない」と情報筋は説明した。施設内の劣悪きわまりない環境を考えると容易には信じがたい説明ではあるが、少なくともタテマエとしてこうした考えがあるのだろう。

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金正恩氏は2021年の朝鮮労働党第8回大会で、社会主義法治国家の建設を強調した。今回の措置も「法治」を強化し、客観的な司法手続きと体系を構築する流れの一環と見られる。コロナ前の北朝鮮では、生きていくために密輸、禁制品の取引など様々な違法行為が横行し、それに対応する司法も極めて恣意的な基準で量刑を定めていた。

(参考記事:【総括】朝鮮労働党大会…「核の堂々巡り」に陥った金正恩

例を挙げると、他人の生命や健康、人格を侵害する罪を犯した受刑者は、以前なら刑期短縮の対象から外されていたが、罪状や服役態度など様々な要素を考慮して、短縮対象に含めることが可能になった。しかし、反民族・反国家犯罪の場合は、従来どおり刑期短縮は行われない。

また、精神疾患の症状が現われた受刑者に対する診療を行い、保釈の対象とすることも原則とした。

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今回の措置は、上述の法治国家の建設、国際社会からの批判、深刻な労働力不足など様々な背景が考えられるが、人権侵害の総合商社である教化所が、一朝一夕に変わるとは思えない。

(参考記事:北朝鮮の女囚28人が「陸の孤島」で強いられた残酷体験