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「今年はもう水汲みをしたくないです」

黄海道(ファンヘド)の部隊に配属されている、ある朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士の、新年の願いだ。

一部のエリート部隊を除き、朝鮮人民軍の部隊の装備や生活環境は非常に劣悪だ。栄養失調にかかり、療養のために実家に戻される兵士も少なくない。また駐屯地には、水道などの設備が整っていないことも多い。

(参考記事:戦争どころではない…北朝鮮軍将校たちを苦しめる栄養失調

水道があっても冬の寒さで凍りつくことが多く、季節を問わず頻発する停電でポンプが動かないため、兵士たちは際限なく水汲みに動員される。

「昨年、部隊近くの小川で汲んだ水を飲んで体調を崩す人が多かった。水質がよくないからです。今年は飲み水の問題だけでも解決してほしいですね」(兵士)

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北朝鮮では、腸チフスやコレラが蔓延している。汚染された水を、濾過や消毒を行わずに飲んだことが原因と見られている。

(参考記事:北朝鮮の「急性腸内性伝染病」、少なくとも800世帯で発生、コレラ、腸チフスか

こんな願いを持っているのは、彼ひとりだけではない。

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「部隊では今年になって初めて、勤務生活での苦労や改善すべき問題点について意見書を集めました。多くの兵士が水汲みに動員されたくないと書いたはずです。とにかくこうして意見書を出すのは初めてなので、われわれの声が届くかどうかが大切だとみんな期待しています」

デイリーNKの軍内部の情報筋によると、朝鮮人民軍総政治局は新年早々、軍生活で困難な点と部隊で解決すべき問題について、兵士たちから意見書を出させるようにとの新年事業執行指示を全軍に下した。

各部隊の意見書をまとめた結果、飲み水の問題を解決してほしい、無償で病気治療を受けられるようにしてほしいという要求が相次いだとのことだ。軍幹部と異なり、末端の兵士はコネやワイロを使わなければ診療所で治療さえ受けられない。

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一方で、除隊を控えている兵士たちは、意見書の提出に後ろ向きだったという。

「もうすぐ除隊するためか、苦労していることや改善してほしいことを具体的に挙げていない。彼らはただ、除隊後に農場や炭鉱、干拓地の建設現場などへの国家的な集団配置に巻き込まれないことを願っている」

一方、兵士の家族たちは、商売ができるようになることを望んでいる。劣悪な配給条件で生活するために、制約なくお金を稼ぎたいというのが軍人家族の希望だ。黄海道在住の兵士の家族はこう語った。

「軍人の家族は規則上、商行為ができないことになっているが、少しは見逃してほしい。今年は小さな店を出して豆腐でも売ってお金を稼ぐのが願いだ」

(参考記事:戦争どころではない…北朝鮮軍将校たちを苦しめる栄養失調