北朝鮮当局は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために、国境を封鎖した。これに伴い、外国人の入国が一切認められなくなっていたが、3年10カ月ぶりに中国人の貿易業者、投資家、技術者に対するビザの発行を再開した。
韓国デイリーNK取材班は12日までに、北朝鮮が今月初めに中国人を対象に発行したビザの写真を入手した。当局は先月初めから、コロナ前に北朝鮮で経済活動を行った経験のある中国人を対象にしたビザ申請の受付を開始し、今月1日から発行を始めた。現在、ビザ発行業務は北京の北朝鮮大使館と遼寧省の瀋陽および丹東の領事館で行っているという。
当局が発行したビザには、ビザ申請者のパスポート番号と目的地、有効期間、滞在期限、国境通過地点、発行日、発行場所、同伴者の有無などの情報が記載されている。滞在期限は90日で、滞在目的に応じてより長く申請できる。また、ビザの様式は、情報と背景の絵などから、国境封鎖前に発行していたものと同じものであることがわかる。
国境通過地点が平壌、新義州(シニジュ)、豆満江と明記されており、ビザを受け取った人は、旅客機を利用して平壌国際空港からに入国するか、丹東からバスなどで新義州に入ることができると見られる。
また、北東部の羅先(ラソン)、会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)からの入国も可能であると思われる。そこで貿易を行えば、沈滞していた地域経済が息を吹き返す可能性がある。
(参考記事:北朝鮮北部の税関、未だに本格的業務の再開には至らず)北朝鮮当局が今回ビザを発行した対象は、中国人投資家と貿易業者、建設技術者に限定された。
デイリーNK内部情報筋によると、当局はアパレル、靴、建築資材を生産する北朝鮮国内の工場に投資していたが、国境封鎖に伴い今まで入国できなかった中国人投資家に優先的にビザを発行している。これら工場の稼働を正常化させる狙いがあるものと思われる。
また、北朝鮮の貿易会社と取引していた多くの貿易業者にもビザが発行された。彼らは北朝鮮で生産された物品を中国に輸出し、また輸入品を北朝鮮に輸入することに積極的に関与すると見られる。
特筆すべきは、ガラス、窓枠、左官、タイルなどの技術を持つ中国人にもビザが発行された点だ。特権層の住居、施設などの建設現場に投入され、北朝鮮の技術者に技術指導を行うものと見られる。
ただ、今の時点でビザを得られたのは業者や技術者に限られ、一般の旅行者へのビザ発行はまだ再開されていない。情報筋は、一般旅行者へのビザ発行は今年いっぽい再開されないものと見ている。受け入れ施設の建設、拡充工事もストップしてしまっているが、コロナ前はオーバーツーリズム状態であったことを考えると、工事の再開も考えられる。
(参考記事:金正恩の肝いり「巨大リゾート」がゴーストタウン化している)