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今月26日は、北朝鮮の各道・市・郡・区域の代議員選挙(地方議会選挙)の投票日だ。

1948年8月の第1期最高人民会議代議員選挙は、複数候補が出馬する普通選挙だったが、「賛成」または「反対」と書かれた投票箱に投票用紙を投じる形で行われ、今と同様に秘密選挙の原則が守られていなかった。それ以降は朝鮮労働党、またはその友党(衛星政党)の単一候補に対する信任投票となった。今回は75年ぶりの複数候補による投票となる。

なお、日本の植民地支配下にあった1931年に地方議会の選挙が行われたものの、25歳以上で5円以上の所得税を支払った男性にのみ選挙権が与えられる制限選挙だった。

(参考記事:史上初、複数候補が競う北朝鮮の選挙に有権者は「あまり意味ない」

北朝鮮の各地では、選挙場(投票所)の準備が行われ、その周辺には「皆が賛成投票しよう」というプロパガンダポスターが貼られ、国旗が掲揚されている。コロナ明け後で初めての選挙となるため、内外に政治的意義をアピールせよとの当局の指示に基づくものだ。

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そして、これらすべての費用は有権者が負担させられることとなった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、新義州(シニジュ)市内の東上洞(トンサンドン)で、1世帯あたり2000北朝鮮ウォン(約34円)が選挙費用として徴収された。

情報筋の住む地域では、洞事務所(末端の行政機関)が投票所となり、周囲ではロープにくくりつけられた何枚もの国旗が風に揺れ、正門の両側の柱は、白い紙の造花で飾り立てられた。今までの選挙では、投票所にプロパガンダポスターが貼られることがあったが、周囲にまで派手な装飾が施されるのは初めてだと情報筋は語った。

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平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、殷山(ウンサン)郡内で、人民班長(町内会長)が家々を回り、投票所の装飾費用だとして、1世帯当たり3000北朝鮮ウォン(約51円)を徴収したと伝えた。

投票所の前には、装飾費用として30万北朝鮮ウォン(約5100円)以上を選挙委員会に出した人の名前が貼り出され、自発的な投票所装飾費用の納付を促している。「出したカネの金額が忠誠心、愛国心の目安」という、北朝鮮でよくあるやり方だ。

出さなかった、あるいは出せなかった場合のペナルティについて情報筋は言及していないが、思想に問題がある者として、監視対象になる可能性が考えられる。

(参考記事:「すべてはカネ次第」との現実を学ぶ、北朝鮮の少年リレー行事

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当然のことながら、有権者からは不満の声が上がる。

「人民のしもべとして働く代議員を公民証(IDカード、選挙権のことを指す)を持ったわれわれが選ぶのが選挙なのに、投票所の装飾費用をなぜわれわれが払わなければならないのか」(有権者)

他の国では、選挙運動が有権者のカンパ、献金で行われることはあっても、選挙そのものの費用は、有権者が納めた税金で賄われる。しかし、公式の税金制度が廃止されている北朝鮮では、今回のような「投票所を飾り立てよ」という突発的な指示があった場合、対応するだけの財源がない。そこで、住民から徴収するという形が取られる。

金正恩総書記は、このような「税金外の負担」を禁じよと厳命したが、全くといっていいほど守られていない。こんなやり方で内外にどんなアピールができるのだろうか。

(参考記事:「税金外の負担」禁止令が破られる、税金のない国・北朝鮮