人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

かつて、北朝鮮の輸出品として最も多いのは石炭だった。一時期は対中輸出のほぼ半分を占めるほどだったが、国連安全保障理事会が2017年8月に採択した対北朝鮮制裁決議2371号で、石炭と鉄鉱石の輸出が全面的に禁止され、一時は全く輸出できなくなってしまった。

制裁を破っての輸出は続けられているものの、コロナ禍や中国の大気汚染対策とも相まって、以前ほどの量ではない。石炭に変わって対中輸出額の1位となったのは「毛」だ。

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、中国の海関総署の統計を引用し、今年9月に中国が北朝鮮から輸入したもので最も多かったのは、かつら、つけひげ、つけまつげで、額にして1796万ドル(約27億1000万円)で、対中輸出の全体の65%に達したと報じた。これら製品は今年2月から8カ月連続で輸出最多を記録している。

一方で、北朝鮮が中国から輸入したものの中で最も多かったのは「かつら製造用の人間の髪の毛」で、206トン、2146万ドル(約32億3866万円)に達した。

髪の毛の調達は、北朝鮮国内でも行われている。女性たちは、なんとかして髪の毛を伸ばしてから売って、生活費を賄おうとしている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮では、かつら用として女性の長い髪の毛の需要が高まっているが、入手が困難になりつつある。というのも、髪を長く伸ばすのは非社会主義現象(社会主義にそぐわないと当局が考える行為)に当たる。取り締まりに遭えば、無惨に切られてしまうのだろう。

しかし、女性たちは取り締まりの網をかいくぐり、髪を伸ばしている。取り締まりが厳しいときには、外出時にも細心の注意を払う。

25センチの髪は、トウモロコシ20キロから25キロ分になる。お金に換算すると42000北朝鮮ウォン(約714円)から52500北朝鮮ウォン(約893円)で、かなりいい儲けになる。北朝鮮には「髪を頻繁に洗うと早く伸びる」という俗説があるようで、女性たちは石鹸を使ってしょっちゅう洗髪するが、石鹸代を差し引いても儲けが残るとのことだ。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

髪は美容院や市場で買い取られ、タルリギ(商品を他地方に運ぶ商人)の手を経て、貿易会社が経営する工場に集められる。そこでかつら、つけひげ、つけまつげなどに加工され、中国に輸出される。

そして、中国製のタグが付けられ、全世界に輸出されるのだ。日本で売られているこれら製品の中にも、北朝鮮の下請け企業で作られたものが混じっている可能性がある。

(参考記事:闇に消える女囚たち…北朝鮮製「かつら」に隠された秘密

日本政府は、北朝鮮製品の輸入を、第三国経由を含めて全面的に禁止しているが、このような形となれば、もはや原産地はわからなくなる。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

一方で、家内制手工業でかつらを作ろうとする人も現れつつある。

「まだ編み物や縫製に比べてかつらの手工業は活発ではないが、かつらの製造で生計を立てる家が増えている。生活が楽になるからと、かつらの作り方を知らない人も学ぼうとしている」(情報筋)

2010年代には、自宅を工場に改造して食品、電化製品、アパレルなどを家族ぐるみで製造、販売する町工場が増えた。しかし当局は、刑法で禁じられている他人の雇用、市場経済化の進展、貧富の格差の拡大を問題視したのか、これらの町工場を抑圧するようになった。

しかし、コロナ禍を経て、再びこのような町工場が増えつつあるようだ。コロナ禍を契機に、経済システムを旧来の社会主義計画経済に戻そうとした当局の目論見は、草の根から崩されている。

(参考記事:「犬野郎!カネ返せ!」北朝鮮政府に”繁盛店”を奪われたオーナーの叫び