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異動の自由のない北朝鮮では、市や郡の境界線を超えるには旅行証という国内用パスポートが必要となる。勤め先の承認を得て、地元の安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)に出向いて手続きを行ってようやく入手できるが、それが今はできなくなっている。選挙のためだ。一体どういうことなのか、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

内閣と社会安全省(警察庁)は先月31日、全国にこのような指示を下した。

「選挙が終わるまで住民の移動を禁止せよ」

道外への移動は完全に禁止し、道内の移動であっても人員や車両の移動を制限せよというのだ。

北朝鮮は、道、直轄市、市、区域、郡の人民会議代議員選挙、つまりすべての地方議会の選挙を26日に実施する。

(参考記事:北朝鮮、11月26日に地方代議員選挙

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選挙と言っても形だけのもので、投票所で受け取った投票用紙を投票箱に入れるだけのセレモニーだ。有権者は候補者の名前も顔も知らないのが一般的だ。そして、投票時間が終わる前の正午のニュースで「99%投票、100%賛成」などと報じられる。それ以前の選挙運動も「皆が賛成投票しよう」と呼びかけるもので、棄権する自由は与えられない。

(参考記事:「全員賛成投票しよう!」北朝鮮選挙ポスターの謎

「地方主権を岩のように固くする選挙に公民(国民)ならば誰もがひとり残らず参加しなければならないという政治事業と宣伝扇動教養(教育)を選挙前日まで1日に数十回強調し、住民の目を覚まさなければならない」(指示文の一部)

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反対票を投じることは可能だが、安全員(警察官)、保衛員(秘密警察)が見守る中で投票用紙にバツをつけて票を投じる。朝鮮労働党の決めた候補に反対すればどうなるか、もはや説明の必要すらなかろう。

(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

全く意味のない選挙ではあるが、当局は投票率100%達成に全力を尽くす。他地方に出向いて投票日に帰ってこないということになれば一大事だ。それで厳しい移動制限を敷いているというわけだ。

また、万が一の事態に備えて、選挙2日前の24日から27日午前0時までを特別警備勤務期間として、工場、企業所、学校、人民班(町内会)で敵と反動分子に付け入る隙を与えないように警備を強化する。

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職盟(朝鮮職業総同盟)、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)、社会主義愛国青年同盟(青年同盟)と安全部、保衛部からなる私服の取締隊が人の集まる場所、学校、路地、市場などを周り、人々の服装、ヘアスタイル、金日成バッジの付け方などをチェックする。

また、駅前で寝る人、固まって話をしている人、千鳥足で歩く人、ゴミを捨てる行為なども取り締まっている。