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朝鮮半島では朝鮮王朝の時代、午後8時ごろから午前4時ごろまで夜間通行禁止令が敷かれていた。身分を問わず、急病や家族の不幸など緊急の場合を除き、夜間に出歩くと非常に厳しく取り締まられた。ただし、この適用を受けたのは男性に限られたというのが特徴的だ。「陽」である男性は昼に、「陰」である女性は夜に活動するのが正しいというのが当時の考えだ。

一方で、日本のような関所制度はなく、通行手形のようなものがなくとも、どこでも自由に旅行することができた。ところが、1948年に北朝鮮が建国されて以降、隣の市や郡に行くにも旅行証と呼ばれる国内用パスポートが必要な制度ができた。これは、居住地から100キロ以上の移動にはパスポートが必要だった旧ソ連の制度を真似たものと思われる。

コロナ前、この制度はワイロによって有名無実のものとなりつつあったが、コロナ禍での移動制限をきっかけに再び取り締まりが厳しくなった。かつては見逃してもらえた墓参りでも、旅行証を要求されるようになったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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先月29日の秋夕(チュソク、旧暦8月15日)を迎え、多くの人が墓参りをした。その中には、居住地域から離れた場所にお墓のある人もいる。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、家族の死亡届を出した居住地管轄の分駐所(交番)で、死亡日時と墓の場所を確認した上で、勤め先、安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)などで何回もの手続きを経てようやく墓参りをするための旅行証が発行される。

今まで秋夕の期間だけは、この旅行証がなくとも、市や郡を境界線を越えた移動は黙認されていた。それが今年からは、原則どおりに行う旨、当局から指示があった。違反者に対しては、1カ月から3カ月の労働鍛錬刑(懲役刑)が課される。

情報筋は、盗難や強盗、脱北などの事件が相次いでいることから、当局が移動制限を再び強化したものと見ている。

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ただ、旅行証が出ずに墓参りに行けないケースもある。死亡届を出していない場合だ。

情報筋の知人は、金策(キムチェク)にある両親の墓に行こうとして、旅行証の申し込みを行ったが、墓の存在が確認できないとして書類が保留にされてしまった。改めて墓の存在確認を要求しているが、未だに承認が降りていないとのことだ。

死亡届を出していなかったからだが、遠くの分駐所まで行って手続きをするのも一苦労だ。それを嫌って、届けを出さない人も少なくないという。

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当然、市民の不満は非常に大きい。

北朝鮮の人々は、墓を非常に大切にする。だからこそ、当局も旅行証なしの移動を黙認していたわけだが、適用が厳格化され、旅行証が発行されず、墓参りができないと訴える人が相次いだようだ。

(参考記事:北朝鮮で「墓の場所」を巡り2家族が乱闘騒ぎ

「こんなことは初めてだ」と驚きを隠せない様子の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、両親の墓参りができなくなり涙を流している人々がいると、市民の不満を伝えた。