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6日間のロシア訪問を終えて帰国した北朝鮮の金正恩総書記。国営メディアで報じられたのは、軍事関連のことばかりだ。食糧支援に期待していた国民からは失望の声が漏れた。

だが、同じ出来事を巡って正反対の見方をする人たちがいる。金正恩氏がロシアから大量の小麦を持ち帰るという噂が流れているのだ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:「何をしに行ったのか」金正恩のロシア訪問に“失望一色”の北朝鮮世論

現地の住民は、金正恩氏のロシア訪問の日程と成果に関する報道を細かく見て、また、テレビに現れる平壌市民のリアクションも細かくチェックしているという。

デイリーNKが咸鏡北道の清津(チョンジン)を中心に、金正恩氏ロシア訪問についての人々の反応を探ってみたところ、食糧問題に大きな期待をかけていることがわかった。

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「この機会にロシアから食糧支援を受け取れたらいい」
「元帥様(金正恩氏)が手ぶらでお帰りになることはないだろう」

そんな期待からか、「今月中に大量の小麦がロシアから入ってくる」という噂が市民の間で急速に広がっている。来月10日の朝鮮労働党創建日を控え、ロシア産の小麦粉の配給が、糧穀販売所(国営米屋)を通じて行われるというものだ。

ある清津市民はこのように語っている。

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「商売あがったりでこのままでは餓死しかねないとの考えが頭をよぎった。トウモロコシ(1キロ)の値段が3300北朝鮮ウォン(約56円)まで上がってお先真っ暗だったが、ロシアから小麦が入ってくるらしいので、楽になりそうだ」

国営メディアが生活に必要な情報を一切伝えない北朝鮮で、情報を得る最も身近な手段は口コミネットワークだ。だが、伝言ゲーム方式で話が伝わるうちに尾ひれが付き、現実とはかけ離れたものになってしまうことも少なくない。困っているときほど、期待が暴走しがちで、事実でないと判明すると、金正恩氏や体制への不満につながる。

(参考記事:「6月に韓国から食糧配給が!」街の噂が金正恩氏を苦しめる

中には、「もうぬか喜びはたくさんだ」「この手の話は信じない」と、噂に懐疑的な見方を示す人もいる。

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「コロナのときも軍糧米を放出して食糧配給を行うとの方針が下されたが、結局行われなかった。絶糧世帯(食糧が底をついた世帯)への特別な対策もなかった。それで、現物を見るまでは信じられないとの反応を示す人も中にはいる」(情報筋)

国営メディアが「党の喉と舌」という役割を捨てない限り、北朝鮮国民はこの手の噂話に振り回され続けるだろう。

(参考記事:「いったい何度目!?」税関再開の噂にもはや期待しない北朝鮮の人々