将軍様が寵愛…北朝鮮「美人女優」作品に今また脚光

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1987年に北朝鮮で制作された映画「桔梗の花」。舞台は1960年代の電気もつかない山奥の村で、派手な都会での生活に憧れ、恋人であるヒロインに一緒に行こうと誘うが、彼女は村に残る。真面目で誠実な彼女は、村の指導者となって家々に電気をひき、茅葺屋根の家を瓦屋根に変えるなど、生活改善に取り組むが、土砂崩れに巻き込まれ命を落とす。

主演は北朝鮮の代表的な美人女優で人民俳優のオ・ミランだ。1980に映画俳優としてデビューし、様々な作品に出演した。代表作となった「桔梗の花」では、1987年の平壌国際映画祭で主演女優賞を受賞し、1990年にニューヨークで開かれた第1回南北映画祭では、最優秀南北映画芸術人に選ばれた。

1988年には人民俳優の称号を得て、国旗勳章1級を授与され、2002年11月には金日成賞を受賞した。映画好きだった故金正日総書記の寵愛を受け、愛人説まで浮上するほどだったが、病魔に侵され、2006年に51歳の若さで亡くなった。

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そして今また、北朝鮮でこの作品が脚光を浴びている。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)慶源(キョンウォン)の幹部は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、愛国社会主義青年同盟が邑(郡の中心地)の若者を対象に、「桔梗の花」の主人公に学ぶ集いを開いたと述べた。

皆で映画を鑑賞した後、「ヒロインのように生まれ故郷と祖国の繁栄に貢献せよ」「元帥様(金正恩総書記)を固く信じて、朝鮮労働党から与えられた革命の哨所(職場の比喩)で汗水垂らして愛国心を発揮せよ」と教え込むというものだ。

また、長年同じ職場で黙々と働いてきた功労者について学び、彼らのように党から任された哨所で祖国のために血と汗を捧げることが崇高な人生観だと強調された。

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このような映画を使った思想学習会は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の前には活発に行われていたが、その後行われなくなり、最近になって復活した。若者の間で広がる炭鉱、農場、牧場などブラック労働への拒否感、楽して稼ごうという風潮が問題視されたことが背景にある。

(参考記事:北朝鮮の過去78年を振り返る映画鑑賞会、観客から漏れる失笑

咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)の情報筋も、市の青年同盟が先月初めに、桔梗の花を使った学習会を開いたが、その背景には、「嘆願」して行ったはずの炭鉱、農場から逃げ出す若者が相次いでいることがあると指摘した。端川だけでも、逃げ戻ってきた若者が10人を超えるという。

嘆願事業とは、ブラックな職場に自ら「嘆願」して行こうというキャンペーンだが、実際は地域ごとに人数の割当がある半強制的なものだ。一度都市部を離れてしまうと、農村戸籍に入れられてしまい、二度と都会に戻ってこれないことから、隙を見て逃げ出そうとする若者が少なくない。

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映画はあくまでもファンタジーの世界で、現実の田舎は、まともなインフラ一つない生活環境の劣悪さ、国からの収奪、出口の見えない貧困がはびこっている。何の縁故もない若者が行ったところで、改善できるほど問題は簡単でない。ヒロインの恋人のように、田舎を去って都会に出ていく人が後を絶たないのが現実だ。

それによる労働力不足は収穫の減少に直結する。その穴埋めを、都市部の若者に押し付けているわけだが、あまりうまく行っていないようだ。それで学習会を計画したと思われるが、そんなものを真に受ける若者はほとんどいないだろう。

(参考記事:もはや「就職詐欺」というべき北朝鮮の嘆願事業