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2017年6月、東京・五反田にあった旅館の敷地を舞台に、所有者だと偽って大手不動産会社にこれを売却し、巨額の資金をだまし取った「地面師詐欺事件」が発生した。一方、土地・建物はすべて国の所有となっており、売買が禁じられているはずの北朝鮮でも、同様の事件が起きている。

不動産の売買の禁止はあくまでも建前であり、実際は居住許可証を売買する形で不動産取り引きが行われている。厳密には違法行であるため、しばしば摘発が行われる。

ただ、儲け話の少ない北朝鮮で最も利益の大きなビジネスでもあり、高位幹部が絡んでいたりすることもあって、なくなることはない。

(参考記事:「金正恩印のタワマン」転売発覚で平壌から追放

さて、事件の舞台となったのは北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)だ。北朝鮮では、家の余った部屋を貸し出して家賃を取る「同居」と呼ばれる間貸しが行われている。

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極端なゼロコロナ政策に基づき、貿易や密輸、地域間の移動を伴った商売が非常に困難になったことで、現金収入を絶たれる人が激増。なんとか生き残るために、間貸しを行っている人も少なくない。中には母屋を貸し出して、自分たちは納戸で暮らし、家賃収入で食いつないでいる人もいる。

(参考記事:追い詰められた北朝鮮の貧困層「母屋貸して、ひさしで暮らす」

そんな中で、店子が家主を偽り、家を売り払って現金を騙し取る事件が多発しているのだという。

青岩(チョンアム)区域に住んでいる50代の夫婦は、家賃収入を得るために、半年前に家全体を貸し出し、息子夫婦と同居していた。先月初め、家賃を受け取りに家に戻ったところ、家から出てきたのは全く見知らぬ人。

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「自分たちの家だ、出て言ってくれ」と告げたが、相手は「自分たちが購入した家だ、出ていかない」と激しく拒否。夫婦は結局、退去を求めて裁判所に訴えたが、未だに解決の糸口が見つからない状況だ。

情報筋はその背景を次のように説明した。

「今の時代は、事実がどうであれ、誰がカネ(ワイロ)を多く支払ったかで、判決が下されるため、問題の解決は難しい。カギとなるのは、もともとこの家を借りて、家主を装い売り払って逃げた者の行方だが、見つけるのは容易でない」

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「地獄の沙汰も金次第」というのが北朝鮮の司法の現状だ。双方とも被害者ではあるものの、公正な司法の判断も、救済も期待できない。そもそも「要らなくなった家は国に返却する」というのが法の規定だ。最悪の場合、双方とも家を奪われる結果になりかねないのだ。

(参考記事:数百円で量刑を3分の1にできる北朝鮮の司法制度

これ以外にも、同様に家主を偽って入居者を募集し、1年分の家賃を騙し取る事件も発生するなど、不動産を巡る詐欺が後を絶たないという。事件の根本的な原因は、現在の経済的な困難にある。

「今、誰もが生活が苦しく、ありとあらゆる犯罪が増えている」(情報筋)

法律が現状を反映していないか、現状を無理やり変えようとする意図で制定されているため、多かれ少なかれ違法行為を行わなければ生き残れないのだ。

さて、不動産詐欺への対策だが、「一見さんお断り」くらいしかないという。

「間貸しをすれば騙されるかもしれないので、よく知らない人に部屋を貸そうとしない。本当に家がなく困っている人たちは、住む家を見つけるのが困難な状況」(情報筋)

当局は、首都・平壌のみならず、地方でも住宅建設を行ってはいるものの、完成したとしても、優先的に割り当てられるのは、幹部やニューリッチ。カネもコネもない庶民は、住宅を求めてさまようしかないのだ。