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北朝鮮が最近になって、再整備と拡大を進めている「糧穀販売所」。現在、286店舗が運営されている。市場に奪われていた穀物流通、価格決定の主導権を国の手に取り戻すのが目的だが、思ったように商品が入荷しなかったり、市場との価格差を利用した「転売ヤー」が続出したりするなど、様々な問題が生じている。

そして、ここに来て新たな問題が浮上した。販売価格にまつわる不正だ。

複数のデイリーNK内部情報筋によると、6月16日から18日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会で、糧穀販売所で販売する穀物の価格が、市場と変わりないほど高い店舗が多いとの指摘がなされた。それに基づき、7月から糧穀販売所に対する検察所の検閲(監査)が始まった。

各地域の糧穀販売所の会計資料を確認し、販売価格を勝手に決めるなどの不正が発覚した場合には、刑法98条の国家財産貪汚罪を適用し、所長、出納係など関係者全員の身柄を拘束して取り調べを行っている。

7月中旬までに不正が発覚したのは、黄海南道(ファンヘナムド)の海州(ヘジュ)市の3店舗、松禾(ソンファ)郡の2店舗、黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)市の2店舗、谷山(コクサン)郡、兎山(トサン)郡のそれぞれ1店舗。この2つの道だけで、18店舗にのぼる。

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うち1店舗では6月初め、コメを5500北朝鮮ウォン(約93.5円)、トウモロコシを2800北朝鮮ウォン(約47.6円)で販売していたが、市場との価格差はそれぞれ300北朝鮮ウォン(約5.1円)、200北朝鮮ウォン(約3.4円)に過ぎなかった。

当局は糧穀販売所に対して、市場より2割ほど安く販売するように規定している。しかし、ほとんど市場と変わりがないことから、住民の不満の声が相次いでいた。これに対し販売所側は「昨年の収穫量が不足しており、輸入量も多くなく、国が販売する穀物価格は高くなるしかない」「価格差がほとんどない場合、市場で買うのか、糧穀販売所で買うのかによって、愛国心が表れる」などといった言い訳をしていたことが、検閲で明らかになった。

情報筋は、不正行為の理由については言及していない。糧穀販売所での穀物価格は、地方当局が、地域の事情に合わせて決定し、月2回、糧穀販売所に通知することになっている。責任者はこれより高く販売して、差額を着服しようとしたものと思われる。

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(参考記事:コントロールしようとした市場に翻弄され続ける「金正恩の米屋」

糧穀販売所への検閲は現在も続いており、今後摘発される店舗が続出する可能性がある。

検察所は、糧穀販売所の責任者が、国と(朝鮮労働)党を裏切って私腹を肥やし、党の糧穀政策を歪曲して住民を混乱させたと見ており、事案を非常に重く受け止め、核心責任者は労働教化刑(懲役刑)ではなく、無期教化刑または死刑にする可能性があると、情報筋は述べた。

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別の見方も存在する。深刻な食糧不足と価格上昇の責任を、糧穀販売所の責任者に押し付けようというものだ。朝鮮労働党のすべての政策は「無謬」とされるが、中間幹部が正しく執行しなかったため問題が起きたと責任をなすりつけ、庶民の不満をそらす手口は、北朝鮮の常套手段だ。政策そのものが間違っていたと認めることができるのは、金正恩総書記だけだ。

(参考記事:「どうやっても無理」と本音を言えば死刑にされかねない金正恩の農業政策

今回の不正を受けて、糧穀販売所には、道の糧政管理局と市や郡の糧政部への月2回の販売計画、結果の報告を義務付け、その結果を内閣非常設経済発展委員会糧穀販売管理分課が取りまとめ、内閣に報告する体系を整備した。

しかし、時間が経つにつれ虚偽報告が横行することは火を見るよりも明らかだ。地方当局と糧穀販売所の責任者がグルになって高値で販売し、差額を山分けし、帳簿も二重にしてごまかす手法が横行するだろう。