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北朝鮮でもデジタルネイティブが、社会を変えつつある。

北朝鮮は2002年から携帯電話サービスを開始したが、中国との国境に近い平安北道(ピョンアンブクト)の龍川(リョンチョン)駅で2004年4月に発生した大規模な爆発事故をきっかけに一時中断した。携帯電話を起爆に利用した、金正日総書記の暗殺未遂であるとの見方があったためだ。

(参考記事:【動画と写真】ベイルート大爆発と北朝鮮・龍川の「爆弾テロ」説

その後、2008年にエジプトのオラスコム社の高麗リンクが携帯電話サービスを再び開始し、2010年代に入ってから徐々に普及が進んだ。家庭環境にもよるが、今の大学生は、物心付いた頃から携帯電話が身近に存在したデジタルネイティブだ。彼らは、北朝鮮の恋愛事情も変えつつあると、デイリーNK内部情報筋が伝えた。

通話や音楽を聞くために携帯電話を使う親の世代と異なり、若い世代は一日中スマートフォンを離さない。音楽、ゲームなどに夢中になり、親子喧嘩もしばしば起きる。

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親は、スマホを取り上げたり、しばらく使えなくしたりと携帯電話をしつけに利用するが、子どもたちが一番恐れるのがこの言葉だ。

「チョナトンをチャージしてやらないぞ」

「電話のお金」という意味を持つチョナトンは、無料通話分を使い果たした後に、チャージする料金のことを指す。これは単に通話料だけでなく、他のサービスのモバイル決済システムとしても使われている。

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モバイル環境にいるのが当たり前の若者にとって、チョナトンがゼロになるのは日常生活を送れないことを意味する。それほど、携帯電話の存在が当たり前になっているのだ。

(参考記事:北朝鮮でキャッシュレス決済が普及しない理由

親に黙って子どもがスマホで勝手に決済するという、全世界的な問題も起きている。親は、「子どもにスマホの使い道を聞くと、チョナトンをねだられるので恐ろしくて聞けない」と苦笑する。

また、スマホの普及に伴って、恋愛事情も変化しつつある。

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現在40代以上の女性は若かったころ、男性を見る際、朝鮮労働党の党員か、大卒か、兵役は終えたのか、どの地域のどんな家に住んでいるので判断していた。しかし、若い世代は、どんなスマホを持っているのか、どんなアプリを使っているのか、どこにアクセスして、どんな情報を得ているのかを見て、自分に合っているのかを判断する。

中には、米アップル社のiPhoneや韓国サムスンのGalaxyを使ったことがあるかどうかを、異性の判断基準にする女性すらいるという。

つまりは相手の経済的、社会的地位を見定めているわけで、その行為自体は新しくはないが、基準が大きく変化したということだ。

一方で、以前は男性が女性を見るとき、外見や家事能力、家の社会的地位で判断していたのが、今ではトレンドに敏感かを見るようになっている。身につけている服、バッグ、靴などのファッション、使っている化粧品のブランドで判断するのだ。

このようなデジタルネイティブの存在は、当局にとって頭の痛い存在だろう。

体制を揺るがしかねないとして、北朝鮮当局は韓流コンテンツの視聴をが厳しく禁じているが、これもスマホなどのデジタルデバイスを通じて共有される。当局は、監視ソフトを強制インストールするなど対策に当たっているものの、それを無効化するソフトが出回ったり、監視ソフトをサポートしていない古いスマホを使ったりと、若者たちは様々な手法で韓流を楽しんでいる。

(参考記事:サポート終了の古いスマホで監視を回避、北朝鮮携帯ユーザーのライフハック

当局は、首領(金正恩総書記)と党、国、社会に忠誠を尽くすことを若者に要求し、思想教育で締め付けを強化しているが、組織より自分自身のプライベートを大切に考える若者の考えを、そんなものでは封じ込められない。たとえ、携帯電話の使用を全面的に禁止したとしても、一度知ってしまった自由の味を忘れることはできないのだ。

(参考記事:北朝鮮の女子大生60人「ろくでもない行為」で吊し上げの刑