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北朝鮮の国営メディアが報じるニュースには、しばしば「超過遂行」という言葉が登場する。計画(ノルマ)を超過達成したという意味なのだが、朝鮮中央通信が今年6月に配信した記事にも、そのような用語が登場している。

農業機械と部品を生産保障するための活動を推進 農業部門で

【平壌6月11日発朝鮮中央通信】党中央委員会第8期第7回総会の決定を体して、農業部門の工場と企業で能率の高い農業機械と各種の部品の生産に拍車をかけている。
安州トラクター部品工場(平安南道)の労働者たちは、各種の変速歯車をはじめとする指標別部品の上半期生産計画を130%以上に超過遂行した。
(以下略)

このように「何パーセント増産」という形で報じられる場合もあれば、「奮闘している」「実績を上げている」など、具体的に何をどれほど生産したのか全くわからないことも多い。実情は不明ながら、信じるに値するものではないことは確かだろう。

それでも、現場には次々とノルマが指示される。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、平壌の中央当局から、「朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会で示された人民経済(民生経済)発展の12の重要目標達成(朝鮮語では重要高地占領)を無条件で占領(達成)するための上半期の総和(総括)を厳粛に行うことにより、下半期の計画遂行(ノルマ達成)について討議を行え」という指示が下されたと伝えた。

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また、そのためには自力更生、堅忍不抜(何事があっても動揺せず、我慢して耐え忍ぶ)の精神を発揮すべきという思想を強調し、すべての行政機関、企業所の党委員会と行政イルクン(幹部)が、足りない部分を補う対策を立てることについても討議を行うように指示した。

これを受け、咸鏡北道の当局は、経済部門の現場に「ノルマを達成せよ」としつこく言い続けているが、現場からは不満の声が上がっている。

ノルマの未達成は、資材や労働力の不足、設備の老朽化などが理由であることを知っている道当局が、「ともかく達成せよ」とプレッシャーをかけ続けているからだ。

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工場の担当者は「ノルマの100%達成も難しいのに、6月には150%も超過達成せよとプレッシャーをかけられている。現実に合わないノルマを課すことそのものが問題なのに、150%と言う無茶な数字を押し付けている」と批判している。

ノルマの超過達成が机上の空論であること以前に、ノルマそのものが現実からかけ離れた数字であることも多い。

ノルマが達成できなければ幹部や担当者は厳しい処罰を受ける。それを恐れて、あたかもノルマが達成できたかのように虚偽の報告をする。それに基づいて、原材料の供給、労働力の確保などを無視して、機械的に増産を指示する。これが年々積み重なり、現実離れしたノルマが課され、虚偽報告を行うという悪循環に陥る。

(参考記事:凶作続きの北朝鮮農業、打開策は「ホラ防止法」

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いくら数字をごまかすにしても、0を150と報告することはできず、ある程度は成果を出さなければならない。そのため、無理なフル稼働を行い、事故につながることも少なくない。

意味のない数字合わせのために、貴重な人命が失われているのだ。北朝鮮版「大本営発表」である。

(参考記事:老朽化した発電設備が爆発…人災を招く北朝鮮の「満稼働・満負荷」