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職場に勤めたところでまともな給料を得られない北朝鮮の人々は、市場で商売をすることで収入を得てきた。

そのような人の割合は調査ごとに異なるが、約半分から3分の2に達する。それだけあって、市場に対する統制の強化は強い反発を呼ぶ。

(参考記事:「コロナより餓死が怖い」北朝鮮国民、市場封鎖に猛反発

当局の取り締まりは、市場で経済活動をしている人の中でも、特に弱い立場の人がターゲットとなっている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたのは、市場の「クルマクン」――リヤカーで荷物を運んで手間賃を稼いで生計を立てている人たちだ。

ちなみに「クルマ」は日本語の「車(くるま)」から来た言葉と思われるが、日本の植民地統治下から残っていたものか、あるいは在日朝鮮人との交流の中で定着したものかは不明だ。

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恵山(ヘサン)市の安全部(警察署)は先月末から、クルマクンに対する取り締まりを強化している。

当局は、2021年8月の朝鮮労働党第8回大会以降、反社会主義、非社会主義、つまり社会主義にそぐわない、反するとされた行為の取り締まりを集中取り締まりの対象としている。その一つが「イナゴ商人」と呼ばれる、市場の周辺の路上などで風呂敷を広げて商売を営む露天商だ。

「美観を汚す」「資本主義的だ」との名目で取り締まられるが、実際の目的は、国営の市場に追い込んで、「市場管理税」を取り立てることにあると思われる。

(参考記事:さっそくワイロで骨抜きにされる北朝鮮の「朝市取り締まり」

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クルマクンは国境閉鎖、貿易停止、移動統制という極端なゼロコロナ対策のあおりを受け、苦しい生活を強いられていた。そして最近では、何とかありついた荷物運びの仕事をしている最中に安全員(警察官)に取り締まられ、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)送りにされる事件が起きている。

市内の恵興洞(ヘフンドン)と恵長洞(ヘジャンドン)では、先月末の2日間で、10人あまりのクルマクンが連行されてしまった。

「力もカネもない彼らは生きていくために頑張っていたのに、労働鍛錬隊送りになってしまった」(情報筋)

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今でも営業を続けているクルマクンは、安全員に一定額のワイロを納められる人だけ。大多数は飢えに苦しみつつも、仕事ができずにいる。彼らの1日の儲けはせいぜい3000北朝鮮ウォン(約48円)。コメ1キロすら買えないのだ。一部の人は、そんなわずかな収入を求めて、労働鍛錬隊送りになるリスク承知で営業を続けている。

クルマクンやイナゴ商人など、最下層の人々の暮らしは苦しくなるばかり。国は一切の支援を行わず、取り締まりを強化して窮地に追いやるばかり。

世をはかなんで、自ら命を絶とうにもそれすら許されず、餓死することを待つしかない日々。それが今の北朝鮮の人々の暮らしだ。

(参考記事:「この国に生まれたことを後悔」自ら命を絶つ北朝鮮の人々