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北朝鮮の7歳から12歳の子どもが所属する朝鮮少年団。旧ソ連のピオネールにあたる組織で、北朝鮮の体制を支える「党の後備隊」、つまり未来の担い手を育成する組織だ。

創立77周年を迎えた今月6日(6.6節)、全国で入団式が行われた。少年団の象徴といえば、大きなスカーフのような首に巻く赤い布だ。これを「赤いネクタイ」と呼ぶが、なんと入団するにあたってはこれを市場で買わなければならないという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、入団式を控えた今月4日、平城(ピョンソン)の市場で最近一番売れているのは赤いネクタイだと伝えた。

少年団には一度に入るのではなく、2月16日の光明星節(故金正日総書記の生誕記念日)に2割、4月15日の太陽節(故金日成主席の生誕記念日)には3割が入団する。いずれも模範的な児童だ。残りの5割が入団するのが、この6.6節だ。

この赤いネクタイ、以前から市場で売られていたものの、コロナ前までは少年団の貿易局が輸入した生地を使って、被服工場に生産させて支給していた。ところが、コロナ禍に入ってからは、輸入が一切できなくなり、供給がストップしたため、自主的な調達を求められるようになった。

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今は、貨物列車と貨物船による輸入が再開されたが、結局は少年団に入団する児童の親に購入が求められるようになった。お値段は1枚あたり8000北朝鮮ウォン(約128円)で、コメ1.4キロに相当する。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、少年団に入団する娘のために、今月3日に市場にネクタイを買いに行ったが、質の良いものは売り切れていて、粗悪品しか残っておらず、買わずに帰ってきたと述べた。

質の良いものは、輸入品の薄くて軽い生地を使い、色合いがよく、しわができにくい。お値段はサイズごとに異なり、小さいものは8000北朝鮮ウォン。大きいものは1万北朝鮮ウォン(約160円)する。

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一方で粗悪品は、地元の新義州(シニジュ)化学繊維工場で生産したもので、スフ(人絹)を染めたもので、暗めの赤で、しわができやすい。値段も安く、1枚1000北朝鮮ウォン(約16円)から5000北朝鮮ウォン(約80円)だ。

入団式は新義州広場で行われ、朝鮮労働党平安北道委員会や人民委員会(道庁)の幹部が子どもたちに赤いネクタイを結ぶ儀式を行うが、いずれも各自が市場で購入したものということだ。

おりからの経済難、食糧難で粗悪品のネクタイでも買えない子どもたちも多い。そういう場合は、友だちから借りて入団式に臨むと情報筋は述べた。

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社会主義、共産主義の未来の担い手を養成する組織の入団式が、カネ儲けの手段になっているということだ。しかし、このような金権体質は今に始まったことではない。

先日行われた「忠誠の書簡継走」というイベントに参加した少年団員は、幹部やトンジュ(金主、ニューリッチ)の子どもたちが7割を占めていた。選抜過程において黒いカネが飛び交ったということだ。

(参考記事:「すべてはカネ次第」との現実を学ぶ、北朝鮮の少年リレー行事

また、様々な行事やコンクール、名門幼稚園から大学の入試、海外派遣労働者などなど、権限を持った人により誰かを選ぶものならほぼ全て、カネとコネの力が物を言う。

そんな環境の下で大人になったのが、「チャンマダン(市場)世代」と呼ばれる今の若者だ。国や社会、組織のためより自分のプライベートを大切にし、ご禁制の韓流ドラマ・映画を楽しみ、自由気ままな暮らしを送る――表では体制に忠誠を誓うものの、裏ではそんな暮らしを夢見ているのだ。

彼らこそが、真の意味で北朝鮮の社会を担う未来の担い手だ。少年団に入ったばかりの子どもたちもその後に続くのだろう。

(参考記事:北朝鮮の名門幼稚園「汚れたお受験」に見るあの国の本当の姿