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北朝鮮の金正恩総書記が、新型コロナウイルスとの「非常防疫戦」での勝利宣言を行ったのは昨年8月。その後も発熱患者の発生が報告されているが、コロナだとの診断は許されない。金正恩氏の宣言に反するという政治的理由からだ。

病院で診察を受けても、「インフルエンザかもしれない」との診断が下され、隔離が指示されるだけで、本当は何の病気なのかわからない。

そして、最近になってまた全国的に発熱患者が増加していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:金正恩「コロナに感染した」事実を認めず危ない状況

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、道内の各病院や診療所に発熱患者が殺到していると伝えた。この時期としては季節外れの暑さとなっているが、それでもインフルエンザや肺炎の症状を見せる患者が多いのだという。

咸鏡北道や各市、郡、区域の病院、診療所、防疫機関では、地域を回って衛生宣伝を行っている。「今回の熱病は治療より予防が一番。手洗いをすること、密を避けること、正しくマスクを付けること」と言った内容の解説講演を行っている。

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しかし、市民の間からは、勤労動員が感染拡大の原因ではないかとの声が上がっている。

現在、清津(チョンジン)市内の浦港(ポハン)区域では、住民が動員されて道路工事が行われているが、この地域で発熱や咳の症状を見せる患者が多く発生したことから、患者の間からは、人々が一度に集まって行う工事を中止すべきと患者らは主張している。また、道路工事だけでなく、今月に入ってからは田植え戦闘、農村住宅の建設など、勤労動員が頻繁に行われている。

「感染の根源である集団労働を一時中断するなどの予防対策は度外視して、衛生宣伝ばかりしている当局の間違ったやり方を批判する声が上がっている」と情報筋は伝えた。

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現在、薬局や病院では消炎鎮痛剤などの価格が高騰し、入手が困難となっている。

首都・平壌でも、発熱患者が増えているようだ。平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、平壌市住宅建設プロジェクトに動員された突撃隊員(半強制の建設ボランティア)から、熱を下げる薬と病院代を送って欲しいとの要求が出されている。その話が現地でも広がっているようだ。

平安北道青年突撃隊は、平壌市内の4200世帯の住宅建設を請け負っているが、発熱患者が急増し、宿舎内に臨時病棟を設置。糾察隊を立ち上げて、患者の外出を制限している。

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他の地方の突撃隊でも、同じように臨時病棟が設置されている状況だ。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊に限っては、国が責任を持って投薬と注射を行っているが、それ以外の突撃隊には解熱剤などを供給したに過ぎない。

(参考記事:【内部資料】北朝鮮、少なくとも37カ所をコロナの恐れで地域封鎖

突撃隊に参加させられているこの情報筋の知人の息子は、隣の平安南道(ピョンアンナムド)突撃隊に友人がいるが、その彼も発熱し、臨時病棟に隔離された状態だと述べた。息子から、友人に渡すための薬と精をつけるための食べ物を買う現金を送って欲しいとの電話がかかってきたとのことだ。

新義州(シニジュ)市内の薬局や市場でも、鎮痛解熱剤の価格が高騰している。情報筋は、市内でも発熱患者が増えている証拠だと述べた。

今年1月と現在の価格を比較すると、ゾロン(ゾレドロン酸)1本は5000北朝鮮ウォンから6000北朝鮮ウォンに、風邪薬1錠は200北朝鮮ウォンから300北朝鮮ウォンに、抗生剤のセフォタキシムは1万北朝鮮ウォンから1万5000北朝鮮ウォンに、中国製の栄養剤は300北朝鮮ウォンから500北朝鮮ウォンに、点滴用チューブは2000北朝鮮ウォンから3000北朝鮮ウォンに上がっている。(1000北朝鮮ウォンは約16円)

いずれの情報筋もコロナとの話はしておらず、熱病の正体はわかっていない。

水道施設が整っておらず、衛生環境や人々の栄養状態が悪いことから、腸チフス、コレラ、結核などコロナ以外の様々な感染症がしばしば流行しており、正確な診断が行われない限りは、何の病気なのかはわからない。

(参考記事:伝染病の広がる北朝鮮「飲用に適した水はわずか10%」

この情報筋も、農村動員、道路工事などの勤労動員が感染拡大の原因と見ており、当局が動員を止めないことを「理解できない」とし、「勉強すべき学生や(職場で働くべき)一般住民を強制的に働かせる朝鮮労働党のやり方」を批判した。