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韓国統一省の先月の発表によると、今年1月から3月までに韓国に入国した脱北者の数は、男性5人、女性29人の計34人で、昨年10月から12月までの25人に比べて9人増加した。

年間2914人と最も多かった2009年をピークに、韓国に入国する脱北者の数は減少傾向にある。2019年までは1000人台を維持してきたが、コロナ禍を契機に激減し、2020年は229人、2021年は63人、2022年は67人に留まっている。中国のゼロコロナ政策終了に伴い、その数は回復傾向にあるが、どれほど増えるかは不透明だ。

ただし、脱北者そのものの数は、必ずしも減っているわけではない。

正確な統計が存在しないため全容は不明ながら、中国には数万人の脱北者がいると言われている。その中には、短期の出稼ぎ目的の人もいれば、中国人男性と強制結婚させられ中国に留まり続ける人もいる。また、韓国行きを目指す人もいるが、失敗すれば苦しい状況に追い込まれる。

ここでは、中国のデイリーNK情報筋が伝えた遼寧省瀋陽在住の脱北者Aさんの事例を紹介しよう。

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Aさんは今年1月、住んでいた家から逃げ出し、韓国行きを目指した。おそらく、人身売買により中国人男性と強制結婚させられた女性と思われる。しかし、あえなく韓国行に失敗。中国の施設で1カ月間拘束され、自宅に戻ってきたが、それからの暮らしは非常にストレスフルなものとなった。

別の脱北者によると、身元引受のために多額の罰金を支払ったAさんの中国人の夫とその家族は、Aさんを徹底的な監視下に置き、トイレにも1人で行かせず、外出も電話も許さない。また、一銭の生活費も渡そうとしない。このような状況でAさんは、心理的、経済的苦痛を訴えている。

(参考記事:コロナ拡大に怯える中国の脱北者、身分証なくワクチン接種できず

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そもそも、多額のカネを払って「買い取った」Aさんに逃げられては困ると中国人家族は考えているのだろう。彼女は「もっと幸せになろうと親きょうだいを置いて逃げてきたのに、今は生きる目的を失った、韓国行きは難しくなる一方で、いつまでここで暮らさなければならないのか」と語ったという。

習近平政権下では、長距離移動の規制が厳しくなった。列車や長距離バスのきっぷを購入するには、身分証の提示が求められる。また、至るところに監視カメラが設置されていて、どこにいても当局に筒抜けになってしまう。それがコロナ禍を経てさらに厳しくなった。

コロナ前には、ブローカーに払う脱北費用は200万ウォン(約20万3000円)を、韓国到着後に後払いすれば済んだが、今は費用がその10倍となり、先払いを求められる。それも成功する保証がないため、ブローカーから声をかけられても、「とても行く気にはならない」という脱北者が多いとのことだ。

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そんな状況で脱北者たちは、より安く無事に韓国に行けるようになる日が来ることを待ち続けている。

一方で、韓国にたどり着いた脱北者の生活は、かつてより向上しつつある。

統一部傘下の南北ハナ財団が、韓国在住の脱北者2500人を対象に行なった調査によると、昨年の時点で、経済活動に参加している脱北者の数は63%だった。平均賃金は238万4000ウォン(約24万2000円)で、一般の韓国国民よりは約50万ウォン(約5万1000円)少ないものの、コロナ前より10万ウォン(約1万円)以上増加した。また、韓国で生活に満足している人も77.4%で増加傾向にある。

政府機関が行う調査であることを差し引いて考える必要があるとはいえ、多くが生活保護に頼らざるを得ない貧困層に組み込まれていたかつての状況からは、変わりつつあるようだ。

(参考記事:韓国に逃れても貧困と差別に苦しむ脱北女性たち