故金正日総書記が1961年に大学生に向け提案した「1万ページ読書運動」。専攻の書籍と合わせて、故金日成主席の労作(著書)をできるだけ多く、速く読み、深い知識を持った革命的な人材となれというものだ。1日に30ページずつ読めば、1年で1万ページに達する。
学問が大切にされ、読書をする人の多い北朝鮮にはおあつらえ向きの運動と言えるが、それも昔の話。今では「本を1万ページ読もう」と呼びかけても、反応は薄い。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、今月15日の太陽節(金日成氏の生誕記念日)を過ぎてから、殷山(ウンサン)機械工場の従業員に対して「1万ページ読書運動」を行えとの朝鮮労働党中央委員会の布置(布告)が、工場の党委員会を通じて下されたと伝えた。
その対象となる書物は、金正恩氏が行った演説、党中央委員会第8期第7回総会の内容がまとめられた書籍、それから革命的エピソードを綴った長編小説だ。読んだ内容を毎日記録して、年末に提出することになっている。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、新義州市女盟(朝鮮社会主義女性同盟)が17日、理論図書(金氏一家の著書)と小説を1万ページ読めという指示を下したと伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面単に1万ページを読めばいいというものではなく、自らの政治思想を整えるための精神修養が目的だという。こちらでも、毎日の読書内容と感想を書き留めて、年末に党に提出せよとの指示が下された。
今回の「1万ページ読書運動」は、国民、中でも若者の間で広がっている反動思想文化、つまり韓ドラやK-POPなどの韓流コンテンツや、それによる影響を除去する意図があるものと思われる。
しかし、国民からの反応は薄い。
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1980年代までの北朝鮮には、なかなかの読書熱があった。多くの人が金日成氏の著書や、革命活動に関する小説を読んで、思想学習を行っていた。しかし、1990年代から浸透し始めた韓流コンテンツが人々の心を掴んだ。一方で、北朝鮮の本は「首領が何でも一番という宣伝だらけでつまらない」(情報筋)と酷評されている。
ドラマやバラエティのみならず、市場経済や世界情勢に関する知識を扱った動画や本も人気だ。北朝鮮は、反動思想文化排撃法を制定して取り締まりに当たっているが、厳しい処罰を行っても、あまり効果はない。
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(参考記事:北朝鮮「韓流コンテンツを流通させたら死刑」反動思想文化排撃法の全文公開)韓国のものばかりでなく、米国や日本の翻訳本も広く読まれるようになっている。北朝鮮の本であるかように表紙を細工したものもあれば、SDカードに保存されたファイルの形で出回るものもある。貸本屋でもそのような本が密かに貸し出されている。
(参考記事:北朝鮮で日本のミステリーが人気「人間の痛みと愛をリアルに描いている」)