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一向に解消しない北朝鮮の食糧難。そもそも、国内生産分だけでは慢性的に不足しており、主に中国かの輸入に頼ってきたのに、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐとの名目で国境を封鎖し、貿易を完全に遮断。すでにかなりの餓死者が出ているとも伝えられている。

食用油も不足品目の中のひとつだが、朝鮮労働党の江原道(カンウォンド)委員会(道党)は道民に対して、「自力更生」で確保するよう指示を下したと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道党は今月中旬、江原道農村経理委員会と各市・郡の農業経営委員会に、食用油問題の解決のためには原料生産が先行すべきだとして、道民自らが立ち上がり、道内の至るところにヒマワリを植えるように指示を下した。そして、企業所、農場、学校、人民班(町内会)、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)にヒマワリを栽培して、秋に納めよと指示した。

江原道は日本海に面していて、北朝鮮の中では気候が温暖で、ヒマワリの栽培において全国の模範になりうるとして、食用油の不足を解決しようと強調した。

それだけではない。今までは中国から輸入していた食用油は有害成分が除去されていない安物だとして、「それをわれわれが口にしなければならないのか。われわれ自身が作った原料で食用油の問題を解決しよう」と呼びかけた。

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これに対し、道民の反応は芳しくない。

「コメがなくて苦労しているのに、油のことまで考える余裕があるのか」(ある住民)

また、指示の内容は机上の空論にすぎないとの批判もある。ヒマワリを植えようにも耕作適地はすべてほかの作物の生産のため使い果たされているため、結局は別の穀物を栽培を減らし、その分をヒマワリ栽培に当てなければならなくなる。

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(参考記事:山に緑が戻るほど人々が飢える北朝鮮の植林事業

だからといって道党の指示に逆らうわけにもいかず、住民らは裏山や畑の周囲などにヒマワリのタネを蒔いているが、その世話をする手間が増えたことに住民は頭を抱えている。

北朝鮮では、朝鮮労働党がすべての分野において指導的立場にある。それは農業でも工業でも同じだ。地元の土壌や気候、水質などを知り尽くした農民や、技術を専門的に学んだ技術者の頭越しに、思想しか知らない労働党員がトンチンカンな指示を出したりする。それでも住民は、問題が起きることがわかっていても従うしかない。これが、北朝鮮経済を苦境に追い込んでいる原因のひとつなのだ。

(参考記事:「どうやっても無理」と本音を言えば死刑にされかねない金正恩の農業政策