「敵の心臓に針を刺す」北朝鮮”エリート工作員”を見せしめ処刑

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の偵察総局は、日本と韓国に対する工作活動を行う組織だ。1983年のビルマ(現ミャンマー)のアウンサン廟爆破事件から、故金正日総書記の甥にあたり、韓国に亡命した李韓永(イ・ハニョン)氏暗殺など、様々な事件に関わってきた。また、マレーシアで起きた金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件にも関わっていると言われている。

その能力を遺憾なく発揮して行っていた「ビジネス」が摘発された。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

摘発されたのは偵察総局に勤務する軍官(将校)Aさんと、偵察総局の一般職員Bさんの2人だ。2人は5親等、つまりいとこの子に当たると思われる。Aさんが偵察総局に勤務することになり、そのコネを使ってBさんも勤務することになった。

今月7日午後2時から、平壌市郊外の兄弟山(ヒョンジェサン)区域にある偵察総局本部の射撃訓練場で行われた公開裁判で、次のような罪状が「政治的蛮行」として読み上げられた。

○韓国、米国、日本、中国、英国、フランス、ドイツ、ベトナムなどの世界各国のニュースを国内に伝えたこと
○車や携帯電話のデザイン、街の風景を撮った画像ファイルを作り、偵察総局の職員や他の住民に見せたこと

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

世界各国のSNSユーザーなら当たり前のようにやっていることだが、北朝鮮ではなぜ問題になったのだろうか。まず、経緯から説明しよう。

Aさんは今年1月に偵察総局に配属になり、引っ越すことになった。それからしばらくして、地域の人民班(町内会)に住む女性が、Aさんの家の様子がおかしいと感じた。

昼間は誰も家に上げようとせず、誰とも付き合おうとしなかった。ところが夜になると、家の明かりが漏れないように電球に覆いをかぶせた状態にしたり、急に笑い声が聞こえたりと、静かに過ごしている割には目立つ存在だったようだ。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

なぜかAさん一家に嫉妬心をいだいていた同じ町内のCさんが、自主的にAさん宅の監視を1カ月に渡って行い、細々と記録した上で、保衛部(秘密警察)に報告した。保衛部はそれをもとに、Aさん宅に対して抜き打ちの家宅捜索を行った。

すると、家にあったパソコンから40冊もの韓国の書籍のファイルが、家具の中に隠されていた外付けハードディスクには、国際情勢などに関するファイルが多数発見された。

かくして、Aさんと、その作業に関わっていたBさんには、死刑判決が下され、偵察総局の軍官、軍人が見守る中で、銃殺された。偵察総局本部射撃訓練上での公開処刑は10年ぶりのことだという。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

また、AさんとBさんの家族は、翌日の早朝に、トラックに乗せられ、管理所(政治犯収容所)送りとなった。

(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

さて、2人が処刑された理由だが、情報筋は次のように見ている。

「偵察総局は文字通り、敵どもの心臓に針を差し込み情報を奪取したり、相手を瓦解させたりする集団だが、思想が変質した内部者たちの末路がいかなるものなのかを見せつけるために即決処理した」

目的外の活動は決して許さないための「見せしめ」ということだが、それ以外にもこのような見方も示している。

「偵察総局は外国の情報収集を目的にしているだけあり、世界情勢に精通していなければならないことは誰でも実感している。しかし今回の2人は偵察総局の『生え抜き』ではなく、他から異動してきたためコネがなく、ターゲットになったとの話も聞こえる」

配属されて3カ月しか経っておらず、最初はおとなしくして徐々にコネを広げていき、問題が起きたときに守ってくれる上役などとまずはつながりを作るべきだったということだ。だが、北朝鮮では中々得られない世界各国の生の情報への好奇心が先立ち、慎重さに欠けてしまったようだ。まさに「好奇心は猫を殺す」だ。

(参考記事:金正恩命令で公開処刑…ある夫婦がハマった「危ない愉しみ」