昨年12月4日の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択された「反動的思想・文化排撃法」。
北朝鮮当局が体制を揺るがしかねないと考える、韓流ドラマ、映画などの韓流コンテンツ、海外の映像やラジオ放送、アダルトビデオ(AV)に対する取り締まりを強化するためのもので、最高刑は死刑だ。
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第3軍団の大佐が、自宅に韓国のドラマやバラエティ番組のファイルが保存されたUSBメモリを隠し持っていたことが発覚し、銃殺されたが、今度は民間人4人が一度に公開処刑にされたと、デイリーNK内部情報筋が伝えている。
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処刑されたのは、平壌在住の50代のチャン氏と40代の妻、その従業員男性2人だ。夫婦は首都・平壌市内の兄弟山(ヒョンジェサン)区域の下堂洞(ハダントン)に住んでいた。ここは、タバコ工場から横流しされたタバコの種を使って栽培したタバコ葉を、軍や国境警備隊を通じて密輸した巻紙で巻き、「カデギタンベ」という偽物のタバコを生産、販売する人々が多く住む地域で、チャン氏夫婦もそんなビジネスで生計を立てていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「カデギタンベ」は、パッケージや味まで本物そっくりなのに、価格は半分程度で、地方を中心に需要があった。
(参考記事:北朝鮮で「密造酒を飲んで死亡」多発、当局も警戒呼びかけ)そこそこ儲けたのか、チャン氏夫婦は昨年8月、平屋の自宅を2階建てに改造し、隣家に立ち退き金を払って買い取るなどして、家を増築した。敷地内に設けた工場で、3〜40人の従業員を雇い入れ、カデギタンベの製造に当たらせていた。
これは日本や韓国なら、ごく平凡な中小企業の社長だが、北朝鮮ではそうはいかない。富を見せびらかすような行為は、防犯上はもちろんのこと、政治的にも危険な行為だ。
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案の定、その繁盛ぶりは近隣住民の妬みを買い、やがて怪しまれるようになった。そこには、チャン氏夫婦の工場で製造したカデギタンベを地方に運んでいたポリバス(民間人所有の車両)ドライバーの夫婦も含まれていた。
この夫婦は以前から、チャン氏から毎回、タバコの入った段ボール箱に加えて、別のもう1箱の運送を依頼されることを怪しく思っていたが、今年1月、意を決してその箱を開けてみた。
すると、中から出てきたのはタバコのカートンにぎっしりと詰められたSDカードだった。中に韓流コンテンツが保存されていることまで確認したドライバー夫婦は、チャン氏夫婦を保衛部(秘密警察)に通報した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面おりしも、反動的思想・文化排撃法の成立を受けて「反社会主義・非社会主義相当連合指揮部」が立ち上げられ、活動を始めた直後のことだった。事件の捜査権は保衛部から、この指揮部に移管された。
指揮部はチャン氏夫婦の自宅の家宅捜索に踏み切り、大量の中国製SDカードが発見された。追及を受けた夫婦は、昨年8月頃にタバコの巻紙を密輸したときに2回ほど、SDカードが入れられていたことがあったと説明。誰が入れたのかはわからないと主張した。
その上で、好奇心で映像を見てみたところ「これまで見たことがないほど面白く、ハマってしまった」という。そして、危ないとは知りつつも、SDカードにコピーして地元の市場で売りに出したところ、非常に反応が良かったため、本格的に韓流ビジネスに手を出したと自供した。
この事件は、1号報告(金正恩総書記への報告)がなされ、民族反逆者として取り扱えとの指示が下された。通常なら、予審(起訴前の取り調べ)で6ヶ月はかかるところだが、当局は見せしめにするために、チャン氏夫婦を逮捕後しばらくして、SDカードへのコピーを手伝っていた男性従業員2人と共に公開処刑することにした。
そして、平壌郊外の寺洞(サドン)区域の大園里(テウォンリ)射撃場で今月2日、平壌市全体の人民班長(町内会長)と地域住民が見守る中、男性3人と女性1人の公開銃殺が行われた。
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