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北朝鮮は1974年4月1日、世界で初めて「税金のない国」になったことを宣言した。この日は「税金制度廃止の日」に定められている。だが、実際には税金に相当するものが存在する。

国営の商店やレストラン、レジャー施設から、トンジュ(金主、ニューリッチ)が経営する様々な施設、市場の零細商人が構える小さな売台(ワゴン)に至るまで、毎月の収益の一部を国家納付金として納めるのだが、これは事実上の税金だ。また、一般市民からは家賃や光熱費の形で、税金を徴収する。

計画経済を採用している北朝鮮では、税収にすら計画(ノルマ)が存在するが、年が明けてまだ1カ月半だというのに、ノルマ達成が危ぶまれる事態となっている。デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

南浦(ナムポ)市人民委員会(市役所)は今月1日、「商業部門における国の統一的な管理体制を復元するための事業と、集金所(税務署)の役割を強化する事業を並行して行うように総力をもって当たれと」の指示を、市の商業部に下した。

この指示は、内閣から各道と特別市、直轄市の人民委員会に下されたものだが、国家予算の源泉である税収を最大限増やすように強調している。

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南浦市人民委員会は、商業部と集金所に対して、新たに税金を徴収できそうな税源を調査して見つけ出し、登録に導くようガイドラインを提示した。

登録とは、個人経営の店に安定した営業を認める一方で、その見返りとして収益の一部を国家納付金として納めさせるもので、従わなければ制裁を加える。北朝鮮の店舗は、民家の一部を改造したものなど、外観からはよくわからないものも多く、それを探し出して、きちんと税金を取り立てるということだ。

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南浦市は昨年、国から割り当てられた国家納付計画金の額を達成できなかった。激しい批判を受けたことは想像に難くない。そこで市の商業部は市場、商店、食料品店、総合商店など登録済みの店舗に対して、昨年の未達成分が必要だとして、不動産使用料を値上げすると言い渡した。また集金所は、土地使用料と住宅使用料を昨年の3.5倍にすることを、今月10日までに市内の全世帯に通知することにした。

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昨年まで、ハーモニカ住宅(長屋)やマンションに住む世帯からは、世帯主の月収の3%にあたる額を土地使用料、住宅使用料として徴収し、一戸建てに住む世帯からは、1平米あたり100北朝鮮ウォン(約1.6円)を徴収していたが、これが今年からは3.5倍になる。

また、マンションや一戸建てに住む住民が耕しているトゥエギバッ(小規模農地)からも、面積を測って土地使用料を払わせることにした。

集金所の集金員(徴税人)は、市内の一戸建てを回って、「この土地は国のものだから正確な測量をして、正確な土地使用料を決めるため」として、住宅や畑の測量を行っている。

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人民委員会は「わが国(北朝鮮)は、すべてのものが国家財産であり、個人のものは一つたりとも存在しない社会主義国家であることを心に刻み、使用料の納付は公民の義務であることを自覚せよ」と、値上げに文句を言わないよう釘を刺した。

だが、元々極めて安く設定されている月給の3%だったものが、3.5倍に上がっても、北朝鮮の平均的な月収を考えるとわずか315北朝鮮ウォン(約5円)にしかならない。コメ100グラムすら買えない金額だ。

そこで、自宅で酒や飴を作って売っている人、ニット製品を編んで売っている人など、さらに小規模なビジネスを営んでいる人を見つけ出し、税金の徴収に乗り出した。

(参考記事:【北朝鮮 最新映像】警察から逃げまどう「女性商人」たち

一方、市民は集金員が税金だと称して徴収した現金をネコババすることが非常に多いため、人民委員会の明細票を提示しなければ納税に応じないようにするなどの対策を取っている。

(参考記事:税金制度を廃止したはずの北朝鮮で「水資源利用税」新設