氷点下41度の「陸の孤島」で地獄と化した金正恩の聖地巡礼

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北朝鮮の国営朝鮮中央テレビは、25日の天気予報で、当日の平壌の最高気温が氷点下15度を記録、30年ぶりの大寒波となったと報じた。前日の天気予報では、北部両江道(リャンガンド)の白頭山密営で最低気温が氷点下41度になると予報したが、実際にどこまで気温が下がったかについては言及していない。

北朝鮮で革命の聖地とされる白頭山には、各地から「踏査」にやってくる人が大勢いる。これは、金正恩総書記の祖父・故金日成主席が抗日パルチザン活動を行った地を巡る「聖地巡礼」だ。だが、当局はあまりの寒さにルートの変更を指示した。両江道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:月給12年分の費用がかかる北朝鮮の「聖地巡礼」ツアー

最強の寒波が訪れる直前の今月18日から21日、3泊4日の工程で咸鏡北道(ハムギョンブクト)の大学生たちが踏査に始めたのだが、あまりの寒さに顔面が凍傷になる者が続出、引率の大学教員は血圧が上がりすぎて卒倒し、病院に搬送される事態となった。同様の事態が他のグループでも続出したことから、踏査参加者の間では「白頭山に登れば凍死するかもしれない」と恐怖が広がり、途中で歩みを止めてしまった。

聖地とは言っても、都市部から遠く離れた「陸の孤島」であり、問題が起きればどのような惨事になるかわからない。

事態を重く見た中央党(朝鮮労働党中央委員会)は、天気が温かくなるまで白頭山の天池(頂上のカルデラ池)行きは取りやめて、白頭山密営故郷の家(故金正日総書記が生まれたとされている家)と、その背後にある正日峰(チョンイルボン)に登り、忠誠の集いを持つことで、踏査を終えよとの緊急指示を出した。

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正日峰は白頭山密営の背後にある白頭山のピークの一つで、白頭山の頂上(標高2744メートル)より1000メートル近く低い1793メートルだ。一般的に、標高が100メートル高くなると気温が0.6度下がるとされていることを考えると、白頭山頂上の当日の最低気温は想像を絶するものだっただろう。

中央党は、市党に対して、踏査参加者のみならず、革命戦跡地管理事務所の従業員、解説講師(ガイド)、三池淵市民が寒波の被害を受けないようにケアせよとの指示も出した。革命の聖地で凍死者を出しては縁起が悪いということなのだろう。

この指示を聞いた管理所の従業員、労働党員、解説講師は、次ように述べて自責の念に駆られつつも、胸をなでおろしたとのことだ。

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「踏査参加者のみならず、わたしたちの命も危ないと考えた。そんなことを言い出せば反動分子扱いされるかもしれず言えなかったが、それが事故を生んでしまった」

北朝鮮で金氏一家に関わる事柄は非常にセンシティブで、ちょっとしたことが命取りになりかねない。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

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ましてや、肖像画を守り命を落としたことが美談とされるお国柄である。彼らは自分たちがこのままでは「将軍様の生家を寒さから守って凍死した英雄」にされかねないと考えていたのかもしれない。

(参考記事:「将軍様の肖像画を命がけで守れ」命令にウンザリする北朝鮮国民

また、強風吹き付ける中でバックパックを背負って踏査に向かう学生たちを見守っていた三池淵市民は「あれでは拷問だ」「こんなことで革命の伝統の学習になるのか」「本当にかわいそうだ」との反応を示していたとのことだ。

一方で、市民の中には、踏査参加者について回ったり、ルート沿いに露店を出し、食べ物を販売する商魂たくましい者もいる。

(参考記事:北朝鮮の「聖地巡礼ツアー」に狙いをつける商人魂