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北朝鮮では毎年春と秋に植林事業が大々的に行われ、それに合わせて苗木が生産・供給されている。たとえば今年、国営の朝鮮中央通信は次のように報じた。

数千万株の苗木を栽培 咸鏡北道で

【平壌9月15日発朝鮮中央通信】咸鏡北道で苗木栽培の科学化、工業化、集約化の実現に力を入れて秋季と来年の春季植樹に必要な苗木を十分に確保した。

道育苗場で苗木栽培場にヘクタール当たり数十トンの有機質堆肥を施し、先進栽培技術を導入して祥原(サンウォン)ポプラ、アロニアをはじめとする苗木の活着率を高めたし、設備の稼働率を引き上げて数千万株の苗木を栽培した。

育苗場では、物質的・技術的土台を打ち固めるとともに育苗工の技術・技能水準を向上させて季節にこだわることなく植樹を行えるように苗木の栽培に引き続き拍車をかけている。---

数千万株も栽培した苗木だが、現場では足りていないという。一体どういうことなのか、咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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山林研究院の経済林研究所と道内の山林経営所は、山林地帯を細かく区分けした後、どこにどんな木を何本植えるか計画表を作成し、植樹を進めている。この計画表を受け取った道内の市・郡人民委員会(市役所)は、地域の工場と企業所に対して土地を割り振り、植樹の課題(ノルマ)を課した。だが、工場・企業所の幹部らは、その指示を聞いて呆れ返ったという。

「苗木の数と種類だけ決めて、苗木は工場と企業所が自主的に調達せよと言われ、幹部らは『言語道断だ』と不満を示している」(情報筋)

数千万株という数字の信憑性はさておき、道育苗場で数多くの苗木が栽培されたのは確かなようだが、それが一株もないというのだ。だが、あるところにはあった。

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「バカバカしいことに、今まで苗木が市場で取り引きされることはなかったのだが、急に清津(チョンジン)市内の水南(スナム)市場に苗木を売る商人が現れた」(情報筋)

本来は無料で供給されるはずの苗木だが、どうやら経済林研究所と山林経営所は一儲けを企み、苗木を市場に横流ししたようなのだ。

今や北朝鮮では、幹部やトンジュ(金主、ニューリッチ)ですら、その日の糧にも困るほどの食糧難に陥っている。経済林研究所や山林経営所の職員・幹部とて例外ではないだろう。彼らにとって、今回の植林事業はめったにない現金収入を得るチャンスなのだ。植林は国家的に進められている事業であるため、清津市内の工場と企業所は泣く泣く、高値で苗木を買い取らざるを得なかったという。

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(参考記事:「金持ちまで餓死」北朝鮮国民がさまよう阿鼻叫喚の巷

ただ、あまりにも露骨なやり方に強い非難の声があちこちから上がった。焦った咸鏡北道当局は、「経済林研究所と山林経営所は、国家山林造成に尽力しているのに、一度たりとも配給をもらったことがなく、金儲けの機会もそもそもない、苗木を売ったところでいくらの儲けになろうか」と釈明した。

そして、「今の難局において、皆が理解して共に生きていこう、下部組織同士が取っ組み合いのケンカをして何になるのか」と、経済林研究所と山林経営所の横流しを黙認する態度を示した。

刑法で国家財産窃盗、略取、横領などの違法行為と定められ、10年以上の労働教化刑(懲役刑)、最悪の場合は見せしめとして処刑もありうる横流しだが、それを咸鏡北道当局が黙認した経緯について情報筋は触れていない。ただ、北朝鮮社会の現状を考えると、経済林研究所と山林経営所が道の幹部を相手にもみ消し工作を図ったことは、想像に難くない。

(参考記事:「ノート大量横流し事件」に見る北朝鮮という国の破綻ぶり