「不倫関係」を暴露…金与正が神経質になる対北ビラの中身

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北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は10日に開かれた全国非常防疫総括会議で行った討論で、新型コロナウイルスが国内に流入したのは北朝鮮の体制を批判するビラなど韓国から送り込まれた「見慣れないもの」のせいだとし、韓国に対し「強力な報復性対応を加えなければならない」と述べた。朝鮮中央通信が伝えた。

金与正氏は討論で「世界的にも多くの国が悪性ウイルスに汚染した物体との接触による伝染病拡散の危険性について再び認識し、より効果的な防疫措置を講じている時期に、南朝鮮(韓国)の連中がビラと貨幣、汚らわしい小冊子、物品をわれわれの地域に送り込む行為を働いたのは非常に懸念すべきこと」だと指摘。

続けて、軍事境界線に近い地域が新型コロナ感染者の「初期発生地である」とした上で、「経緯や状況上、全てがあまりにも明白に1カ所を指すことになった」として、「われわれが見慣れないものを悪性ウイルス流入の媒介物に見なすのは当然である」と断じた。

金与正氏と言えば2020年6月、脱北者団体が韓国から北へビラを散布していることを巡って韓国政府を非難。「報復」として南北共同連絡事務所の爆破を主導した事実が記憶に生々しい。彼女はこの件で、「強硬派」のイメージを確立した。

金与正氏をはじめ北朝鮮の指導部が対北ビラを敵視するのは、そこに体制を揺さぶる様々な内容が書かれているからだ。

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2020年に対北ビラが朝鮮半島情勢の火種になった当時、脱北者団体・自由北韓運動連合が北に向けて飛ばしたビラには、北朝鮮の一般国民が決して知ることのできない金一族の「秘密」が書かれていた。

ビラは、金正恩氏には異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏がおり、同氏は「浮気者の金正日」が既婚者であるソン・ヘリム氏と不倫関係となって生まれたと説明。金正恩氏の母で日本生まれの高ヨンヒと金正日氏も正式な夫婦ではなく「不倫関係」だったとしている。

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金正恩氏は、父親の異性関係のだらしなさを嫌悪していたフシがある。それなのに、自身までが「不倫の子」だと指摘されたら、穏やかでいられないかもしれない。

ビラはさらに、金正男氏が2017年2月、弟である金正恩氏が放った暗殺団により、マレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害されたことを暴露。その動機は、日本出身の母を持つ金正恩氏に対し、長男である金正男氏こそが本物の「白頭の血統」だったことにあるとしながら、「稀代の殺人鬼」である金正恩氏を「全民族の名にかけて必ずや処断する」と宣言している。

新型コロナを巡っては、モノを通じた接触感染のリスクは低いというのが、今や国際的なコンセンサスだ。ましてや数十キロ以上も風船で運ばれた後、地上にまかれたビラの表面に、大量感染を起こすほどの活性ウイルスが付着している可能性は限りなく低いと思われる。

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それくらいのことは、北朝鮮当局とてわかっているのではないか。とすると、金与正氏の今回の「報復」宣言は、韓国などに対する新たな外交攻勢の布石と見るべきかもしれない。