「地獄のような日々」北朝鮮国民を苦しめる“死の壁”

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北朝鮮が昨年3月から、1400キロにも及ぶ中国との国境沿いに、脱北や密輸を防ぐためのコンクリート壁の建設を進めてきた。

コンクリート壁とは言っても、冷戦期に東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」のようなものではなく、コンクリートの柱の間に高圧電流が流れるフェンスを張るというものだ。

北朝鮮は新型コロナウイルス対策で国境を封鎖して以降、国境エリアに立ち入った人々を射殺するなどしている。高圧電流の流れるフェンスが完成すれば、文字通り「死の壁」となる。

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もっとも、コロナ対策で国境が封鎖され、貿易が停止されている中での資材調達は容易ではなく、工事は中断してしまっていた。

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そして、完成した区間も豪雨で一部が破損してしまった。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、恵山(ヘサン)市内を流れる鴨緑江が、大雨で増水し、市内や周辺各地に設置されていたコンクリート壁の一部が破損した。

朝鮮労働党両江道委員会(道党)と両江道人民委員会(道庁)は今月15日、機関長会議を招集し、各機関に一定の区間を割り当て、それぞれが責任を持って今月末までに復旧させよと指示を下した。また、破損していない箇所も、今後の災害に備えて再整備する事業も同時に行えと言い渡した。

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道党は、ひとけが少なく脱北ルートとして使われる可能性の高い区間には、6メートルの高さの障害物を設置せよとも指示した。

さて、その費用だが、党や行政の機関のみならず、それ以外の工場・企業所や人民班(町内会)からも徴収している。

金額は人民班ごとに異なるが、高いところでは1世帯あたり2万北朝鮮ウォンに達する。コメ3キロ強に相当する金額であり、住民からは怒りを通り越して、呆れたという反応が出ている。

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「高強度の国境封鎖と移動制限で、密輸や脱北という言葉さえ忘れてしまった人が多いのに、政府は未だに国境遮断に血眼になっている」
「時が経つにつれ生活が苦しくなり、住民は地獄のような日々を送っているが、政府は住民の取り締まりと統制のための手段と体系ばかり強化している」(情報筋)

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北朝鮮と中国の国境を流れる鴨緑江沿いに面した恵山では、市内の国営企業の8割が稼働を停止していると言われ、周囲に農地の少ないこともあり、市民の多くが何らかの形で密輸に関わり、産業のない北朝鮮の地方都市としては、かなりの賑わいを見せていた。

ところが、コロナ対策で密輸が厳しく取り締まられるようになり、市民の生活は困窮。餓死者を出す事態となり、国内の移動制限は幾分緩和されたものの、密輸ができない状態が続き、地域住民の購買力は低下したまま。

自らの首を絞める存在であるコンクリート壁にカネを払えとは、理不尽極まりないのだ。恵山市民の多くは内心「壊れたままにしておけば良いのに」と思っていることだろう。

(参考記事:地域の流通網を破壊してしまった北朝鮮のコロナ対策