「コロナより死者が多い」北朝鮮国民が恐れる”異次元の災い”

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国連の食糧農業機関(FAO)は、2007年以降16年連続で、北朝鮮を「食糧不足国家」に指定している。

非効率で生産性が低く、農民のモチベーションを削ぐ集団農業、肥料など各種資材の不足、根拠不明のチュチェ(主体)農法、相次ぐ自然災害など、様々な原因が指摘されている。

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不足分は、外国からの輸入、国際機関からの援助などで穴埋めをしてきたが、それが2020年以降止まってしまった。北朝鮮当局は2020年1月、新型コロナウイルスの流入を防ぐために国境を封鎖、すべての貿易を停止させた。実情を無視した鎖国政策で、国内では、コロナ前よりひどい食糧不足、物資不足、物価の高騰が起きている。

国のコロナ対策に対する、北朝鮮国民の不満が非常に激しいことを認識した国家保衛省(秘密警察)は、住民の動向調査に乗り出した。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

その結果、集まった声を集約すると「国境封鎖はコロナより死者を多く出した無慈悲な政策だ。今からでも国境を開くべきだ」というものだった。

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具体的な例を挙げると、封鎖中心のコロナ対策に対しては「貿易なしに生きていけない国境沿いに住む人々を死に追いやった」「この(政策)のせいですべての住民が栄養失調で苦しんでいる」と言ったものだ。

また、「わが国(北朝鮮)だけコロナから逃れることができるのか」「こうなることは火を見るよりも明らかだったのに、行き来ができないように道を塞ぎ、結局は住民が食べ物にありつけず死んでしまった」「コロナ感染を免れても、餓死したら何になる。なぜ統制ばかりするのか」などなど、国の政策を非難する声で溢れかえっている。

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地元の朝鮮労働党咸鏡北道委員会は、富裕層から半強制的に金品を集めたり、人民班(町内会)の中で、少しでも経済的に余裕のある人から食べ物を供出させるなどして、絶糧世帯(食べ物が底をついた世帯)に分け与えるなどの対策を取っている。

その一方、国民を監視、抑圧することが役割の国家保衛省は、全く異なる対策を取った。咸鏡北道貿易管理局の貿易収入課の課長を逮捕したのだ。

(参考記事:食糧難の北朝鮮、富裕層に「寄付のお願い」

容疑は「国家の非常防疫方針と防疫方針に不満を抱き、政策を批判しけなした」というものだ。この課長は、自分の関わっていた対中貿易が、国境封鎖でご破算になり巨額の損失を出し、取引先の中国側の業者から詐欺師扱いされたことに非常に憤っており、普段から国の政策に不満を抱いていたとのことだ。

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国家保衛省は調査結果を見て、恐怖をもって人民の口を塞がなければならないと考え、見せしめとして処罰するために、課長に対する内部捜査を行い、逮捕に至った。情報筋は、咸鏡北道保衛局の幹部の話として、国境に接し資本主義の影響を受けている咸鏡北道の人民を押さえつけようとして、国家保衛省の担当者が平壌からやってきて、事を仕立て上げたと伝えている。

情報筋は、「人々が餓死しつつあり、幹部も内々では国の政策を非難するのが当たり前なのに、住民全員を捕まえるわけには行かないので、一人だけ捕まえて殺そうとしている」と国家保衛省のやり方を批判している。

また、地域住民の間でも「不満の多い人民を全員殺せないから、貿易局幹部をスケープゴートにした」と噂されている。恐怖で不満を押さえつけるのは、北朝鮮の使う常套手段だが、一時的な効果しかないようだ。

逮捕された課長は、「マルパンドン」、つまり反政府的な言動を行った政治犯扱いされると見られている。また、家族は保衛部(秘密警察)、安全部(警察署)、所属する職場、人民班から四重の監視に加え、近隣の5世帯からの監視も受けている状態だ。運が良ければ、奥地の農村への追放、運が悪ければ家族もろとも管理所(政治犯収容所)行きとなるだろう。

(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる