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北朝鮮・咸鏡南道(ハムギョンナムド)の歯科医院で、補綴士(歯科技工士)が次々に逮捕される事件が起きた。それは、北朝鮮の医療制度の破綻が生み出したものだった。詳細を、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは咸興(ハムン)にある咸鏡南道口腔病予防院。そこで勤務する補綴士3人が、安全局(警察署)に逮捕された。その容疑は次のようなものだ。

先月中旬、60代の老人が入れ歯の修理のために、病院を訪れた。補綴士たちは、彼がみすぼらしい格好をしているのを見て、カネを持っていないと判断し、診察の受付をしようとしなかった。

ある補綴士は彼に「歯1本で15ドル(約2050円)だが、何本作るか」と露骨にカネの話を持ち出した。すると老人は、こういって激しく抗議した。

「カネがあれば個人のところ(店)に行く。病院に来るものか。患者にはどこか悪いのかを聞くべきなのに、なぜカネの話からするのか。ここは資本主義の国か」

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北朝鮮では、日本の植民地支配から解放された直後の1946年から、医療の無償化、医療施設の国有化が進められ、最高人民会議は1960年2月に全地域での無償治療制度の導入を議決。無料で病院に通える体制が構築された。しかし、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して制度は崩壊、病院で診察、治療を受けるにはワイロが必要となり、薬は市場で買って服用するのが当たり前となった。

しかし、形骸化したとは言え、無償治療制度は生きている。老人は、不当な要求を受けたとして、朝鮮労働党咸鏡南道委員会(道党)と咸鏡南道安全局(県警本部)に信訴(告発)を行った。

当初、道党と安全局は一切の反応を示さなかったが、老人は10日間にわたって道党と安全局の庁舎を行き来して、道党の責任書紀(地域のトップ)と安全局長との面談にこぎつけ、病院で起きたことを洗いざらい伝えることに成功した。

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信訴は、途中で妨害されたりもみ消されたり、或いは加害者から逆襲されたりしないように、強力なコネを使うなどの「工作」が必要だ。情報筋は老人の正体に触れていないが、道の上層部に会えたことから、かつてはそれなりの地位にいた人物の可能性が考えられる。

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そして事件が動いた。道安全局は補綴士3人を逮捕し、取り調べを行った。そこから明らかになった、北朝鮮の歯科治療の実情は次のようなものだ。

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一般的に補綴士は、腕が良ければ病院をやめて自宅で開業し、差し歯1本に10ドル(約1370円)、入れ歯に80ドル(約1万950円)から200ドル(約2万7400円)を受け取る。貧しい人は到底手が出せず、国営病院を訪れる。

しかし上述の通り、そこでも同じような扱いを受ける。そんな現実に怒った老人の訴えが、道党と安全局を動かしたのだ。道党は、口腔病予防院での反社会主義・非社会主義行為(社会主義にそぐわない行為)に対して、検閲(監査)を行っており、場合によってはさらなる逮捕者が出る可能性がある。

ただ、根本の原因は、医療関係者が到底生きていけないほどの薄給にある。かつては食糧や生活必需品の配給があり、さほど現金がなくとも生きていけたが、無償治療制度の崩壊と時を同じくして配給制度も崩壊。すべてのものを市場で買わなければならない、現金なしでは生きていけない世の中になってしまったのだ。

今回の事件は全国どこの病院でも起きている現象だ。たまに摘発を行っても、何の解決にもならない。結局、今回逮捕された補綴士が運が悪かった、ということだ。

「安全局に逮捕された彼らは無事では済まされないだろう」(情報筋)

老人の訴えは正論ではあるのだが、それでは生きていけないのが北朝鮮という国の現実だ。

(参考記事:ワイロ払えない妊婦が放置される北朝鮮医療の現状

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