北朝鮮「悪徳警官」の態度に変化…国民の不満に危機感

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「内部の綱紀を整え、住民たちとの関係改善のために努力せよ」

これは、北朝鮮の社会安全省(警察庁)が今月初めに、全国の道・市・郡・区域の安全部(警察署)や分駐所(交番)に下した内部指示文だ。いったいなぜ、このような指示が下されたのか。その背景について、平安北道(ピョンアンブクト)の司法関係者が、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に答えた。

まず、理由として挙げられたのはコロナだ。北朝鮮は、先月12日に新型コロナウイルスの感染者の発生を公式に認めて以降、「非常防疫大戦」と称してコロナとの闘いを繰り広げており、ロックダウンなど様々な措置を取ってきた。

あまりにも厳しい統制に一般住民の不満は高まる一方だが、安全員(警察官)は「人民の上に君臨する」という姿勢を取り続け、横暴な振る舞いを行っている。

日頃から権力を振りかざし、商人を恐喝するなど、ただでさえ嫌われ者の安全員だが、このような状態を放置すれば、民心の離反が加速するのではないかという懸念が背景にあったとのことだ。

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指示文の詳細を見ると、「社会安全機関が、軍隊のような厳しい命令指揮体系と強い綱紀を打ち立てることがまず解決すべき問題」だと指摘されている。安全員の勤務態度を改善させ、地域で起きる問題を円満に解決することで、地域住民との諍いを解消し、社会安全機関のイメージを回復せよということだと、情報筋は説明している。

また、今年末までという長期的視点に立って、指示文をいかに執行するかについて具体的な案を立てよとの指示も含まれている。事業指揮部を立ち上げて、毎日、毎週、毎月、執行結果をまとめて平壌の社会安全省に報告せよとの内容が含まれている。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の司法関係者は、咸鏡北道安全局(県警本部)の責任幹部(上層部)が、市や区域の安全部に出向き、指示文の背景について説明していると伝えた。この指示の執行如何によって、幹部事業(人事)に影響が出るとの話も伝えられ、安全部の幹部の間には緊張が走っているとのことだ。

また、コロナ対策の弊害として現れた経済難により、世論が悪化していることへの対処としてこのような指示が出されたとも説明している。安全員の振る舞いのみならず、コロナ対策自体も、若干緩和せざるを得ないほど、状況が悪化しているのだ。

(参考記事:餓死者発生でようやく一部緩和された北朝鮮のロックダウン

指示の影響は安全員の態度に現れたと、この関係者は伝えている。

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「今まで、住民をバカにして、何かあれば暴言を吐き、暴力を奮っていた安全員が、最近ではすっかりおとなしくなった」

しかし、その様子を見た住民の反応は「いつまで続くかわからない」と懐疑的だという。

今までも同様の指示が下されるたびに、安全員の態度が変わったが、しばらくすれば元通りになるということが繰り返されてきたためだ。

(参考記事:金正恩氏にも治安機関の「拷問と暴行」を止めることが出来ない

そもそも、北朝鮮の抑圧体制を末端で支えているのが彼らだ。法律や国の命令そのものに、人権を侵害するようなものが多く含まれており、表面的に態度が柔和になったとしても、世界最悪の人権侵害国家であることに何の変わりもないのだ。